毒杯に沈む黒月 (ページ14)

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もしかして駐車禁止の場所だっただろうか。

「すみません、すぐに車を…」

「あんた、李家の人間だな」

「……はい？」

「漆黒髪に…深い闇のような瞳…」

俺はこの人達とどこかであったことが会ったか記憶に検索をかけるがそれに該当するものが見当たらない。

「確かに私は李家のものですが…、どなたかとお間違えでは？」

髪が黒い人はどこにだって居るだろう、目の色だってそうだ。

それをいうのも李家には黒髪黒目の人が沢山いるから。

「まちがいじゃねえ…あんただ…、そのピアスにも見覚えがある！」

ピアス？

このピアスは俺が李家に来た時にもらったユーシスと同じ……。

ユーシスと同じ？

もしかして、ユーシスと知り合いなのか？

「来てもらおうか…たっぷり話したいことがあるんだ」

そういう男の目や回りを囲む人たちの目は、とうていただの知り合いだと言うには場違いなほど、刃のような鋭い目つきをしていたのだった。

俺の車にを使い何処かへ走らせていた。

ついた場所は廃れた建物で、草木は伸び放題なうえに外壁は剥がれ落ちところどころ鉄筋が顔を出している。

今にも崩れそうな階段を上り促されるままに部屋に押し込まれる。

部屋の中も外と同じく廃れていた。

カーテンであったであろう破れた布に、割れたままの窓。

薄汚れたカーペットに中身の飛び出しているソファ。

どう見ても誰かが住んでいるとは思えない。

こんな所に連れてきてどうする気だ…？

部屋を見回していると、バサバサと何かが落ちる音が聞こえて振り返る。

「それは…」

それはさきほど俺が必死になって探しようやく買えた本だった。

駆け寄って拾い集めようとすると、その本を汚れたスニーカーが踏みつける。

見上げると男が唇を噛み締め見下ろしている。

「足を乗せるのはご遠慮ください、大事なものなのです」

「大事な物？こんな毒草ばっかり集めたものがか？！」

俺が頼まれて買ったのは、薬草、そしていろいろな地域に生息する毒草の詳細が事細かに書かれている書物だった。

それ以外にも薬の生成方や医学的な本まである。

俺にとっては大事なものでもないのだが、ユーシスが欲しがっていたものなのだから大事に扱わなければならない。

「私に、何か御用なのでしょう？ご用件を賜りたく…」

未だに本を踏みつける男を、俺は睨みつけた。