episode 10 ページ10
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あれから数週間が経ち、お互い連絡しないまま時が過ぎた。
YouTubeや音楽番組、色んな場所で活躍する大我くん。
今まで推しとして応援してきたのに、なぜか姿を見ると昔付き合ってた元カレを見るような気分になってしまった。
楽しかったはずの推し活が、今は胸が痛む。
連絡しようと思えばできるのに、
無視された時の辛さを考えると出来ずにいた。
ﾋﾟﾛﾝ＿＿
《 やっほー急だけど今からこの前のBAR来れる？ 》
それはじゅりからの連絡だった。
いや、じゅりから連絡が来るのも
普通に考えておかしいんだけどさ。
《 分かりました、タクシー使うのですぐ着きます 》
これは所謂都合のいい女だろう。
誘われてすぐ行くなんてさ。
でも、推してるアイドルグループのメンバーに
誘われたら誰でもこうなるよね？！
そう自分に言い聞かせた。
.
.
店に着くと店の前でじゅりが待っていてくれた。
樹「 久しぶり、Aちゃん 」
『 お久しぶりです 』
樹「 敬語辞めようぜ〜 友達なんだし 」
友達… 友達…
中に入ると前と同じ個室に通された。
『 えっ、』
大「 えっ 」
樹「 んじゃ、俺帰るわ 」
『 じゅり、待って、どういうこと？ 』
樹「 やっぱじゅり呼び可愛い、笑 」
「 きょも奥手だから 」と耳元で囁いて部屋を出てしまった。
大我くんが奥手？あんな積極的だったのに？？
「 とりあえず、何か飲む？ 明日仕事？ 」
『 いえ、明日は休みです 』
「 良かった 」
ぎこちない空気が流れているのは言うまでもない。
少し距離を置いて席に座る。
グラスの中の氷がカランっと音を立てて溶ける。
その音が聞こえるほど私たちは無言なのだ。
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作者名：しろ | 作成日時：2023年9月14日 1時
