episode 9 ページ9
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『 た、大我くん…？ 』
「 俺の綺麗な顔見てなに想像してた？ 」
『 なにって… 別に、綺麗だなぁって 』
「 ふうん、」
そういうと口を尖らせて拗ねるように顔を離した。
心臓のドキドキを隠すように私は水を飲み干す。
「 ねえ、」
『 ん？ んッ...！ 』
次は大我くんが私の頬を手で包み込み
綺麗な顔が近付いて唇が重なった。
いやいや、酔ってるにしても急すぎる…
なにこの状況、推しとキス？
容姿端麗な訳でもないただのヲタクが…？
何秒唇が重なったのだろう。
一瞬のようにも感じて、永遠のようにも感じた。
逃げ出したいと同時に、ずっとこうしてたいという
煩悩が一瞬のうちにグルグルと脳内を駆け巡った。
「 ふふ、なに考えてる？ 」
『 えっ… 』
「 急にキスされてどうだった？ 」
『 …ど、どうって、』
「 嫌じゃないの？ 」
『 嫌では、ない、です… 』
「 …はぁ、何してるんだろうね俺 」
『 えっ、？ 』
「 キスの相手が樹だったらいいのにとか考えた？ 」
『 そんな！ 』
「 帰ろっか、酔いすぎた笑 」
何なんだこの人は。
推しの裏の顔がこんなのだなんて知らなかった。
嫌いに、なんてならないけど
驚いているのは正直なところだ。
女っ気がなくて、アニメとかにしか興味無いと思ってた。
小洒落たBARを背に、タクシーに乗り込んで解散した。
きっともう会うことはないんだ。
会うとしても私がライブのチケットを取って会いに行く。
アイドルとヲタクの関係に戻るだけだ。
今までそれが普通で当たり前だったのに、
今日一日でそれが覆ってしまった。
またこんな風に会いたい。
人間はなんて欲深いんだ。
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作者名：しろ | 作成日時：2023年9月14日 1時
