episode 25 ページ25
-
Taiga side ＿
ラジオを終えて急ぎ足で帰る。
タクシーの中でも気が気じゃなかった。
今から帰るよ、の連絡だけ入れると
すぐに既読が付いた。返事は無い。
まだ樹と連絡してるのかな。
タクシーを降りて走って部屋へと向かう。
自分の家にこんなに急いで行くのなんて初めてだわ。
リビングの明かりが見えて安心した。
良かった、今日も居るんだ。
『 あ！おかえりなさい！ 』
「 ただいま、会いたかった 」
リビングのドアを開けると走ってきた。
まるで飼い主の帰りを尻尾振って喜ぶ子犬みたいだ。
あまりにも愛おしくて
カバンや荷物をその場に投げ捨てて
思わずAちゃんを抱き締めた。
このまま俺のものになってほしい。
でもAちゃんは樹が好き。
まずは俺の事を好きになって貰わないと。
『 大我くん… ちょっと苦しい… 』
「 あっ、ごめん！ 」
『 今日何かあったんですか？元気無いって聞きました 』
「 誰に聞いたの？ 」
『 樹くんです。ラジオでも言ってましたし、』
また樹だ。
その樹のせいで元気無いんだけどなぁ。
って馬鹿正直に言えるわけ、
「 大丈夫だよ、ありがとう 」
『 何も出来ないですけど、辛かったら言ってください 』
眉を下げて心配そうに見詰めてくる。
ずるい、Aちゃんの行動全てがずるい。
「 Aちゃんが居てくれるだけで癒される 」
顔見てると何もかも制御効かなくなりそうで、
またAちゃんを抱き締めた。
そうだよ、今抱き締められるのは俺だけ。
樹じゃなくて俺なんだ。
頭にキスをすると
Aちゃんの甘い香りをふわっと感じる。
それだけで胸が痛くなるほど幸せで、
『 大我くんと一緒に寝たいです 』
俺の胸の中で喋るAちゃん、
振動が直接伝わって少しくすぐったい。
「 お風呂入るから少しだけ待ってて 」
『 はい、でもなるべく早くしてくださいね。このハグだけじゃ足りないです。早くもっと大我くんと近付きたい 』
「 Aちゃん、そんなの俺以外に言わないでよ？ 」
『 言わない、大我くんだけです 』
あぁ、もう……
平然を装うのがどんだけ大変か分かってない。
なんでこんな可愛いこと言うの、
恥ずかしそうに俺の服を強く握り締めて、
もうそんなの、勘違いするよ。
俺のこと好きなのかなって、
違うって分かってるから余計苦しい。
-
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 378人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しろ | 作成日時：2023年9月14日 1時
