第26話 ページ28
翌日の夕方。あの娘を夕食に連れ出してこい、とバルボッサに命令されたAはエリザベスに着せるドレスを探していた。流石にナイトガウン姿では夕食に行かせられなかったからだ。
だが男ばかりの海賊船の事、そう簡単にドレスは見つからない。略奪品の中に埋まっているかもしれないと探し始めた手を、Aはため息をつきながら止めた。もう無理だ。無い物は無い____と、思った瞬間。
部屋の隅に、ドレスらしきものが。
それは深い赤色、ワインのような色をした美しいドレスだった。ずっと隅に置かれていたはずなのに、埃一つ被っていない。何故バルボッサはこのドレスを捨てずに残しておいたのだろうという疑問が頭を過ぎるが、取り敢えず着せる物が見つかったのでエリザベスの部屋に向かった。
そして部屋の扉をノックすると、彼女の怯えた声が返ってくる。
「何の用?」
「エリザベス、ちょっといい?」
そう尋ねた瞬間、扉が開いた。そしてすぐにエリザベスの不安げな顔が目に飛び込んでくる。可哀想に、怖い思いをしていたんだろう。
「今晩の夕食はバルボッサと取ってもらうわ。」
Aがそう言ったのを耳にするなり、エリザベスは顔を顰めた。
「嫌よ。」
「悪いけど、貴方に拒否権はないみたい。」
そう申し訳なさそうに言ったAはこれを着てね、とドレスを差し出した。するとエリザベスは諦めたように服を手にする。それを見たAは彼女を一人にして部屋を出ようとした。
と、その時。
「一緒にいて。」
そう呼び止められたかと思うと、エリザベスに手首を掴まれた。その勢いで着ていた服の袖が捲れ上がり、白い腕が露わになる。そしてその腕には、
_____Pの文字の焼印。
その瞬間、エリザベスは見てはいけない物を見てしまったような顔をした。驚愕と恐れの色を目に浮かべ口を開けたまま、後ずさりする。
「貴方・・・・・・海賊なのね?」
エリザベスの口から恐る恐る紡ぎ出されるその言葉。Aが後ろめたそうに目を逸らすと、みるみるうちにエリザベスの目に浮かぶ驚愕と恐れの色が軽蔑と嫌悪に変わる。
「ずっと嘘をついていたの、A?最初からバルボッサの手下だったのね。
・・・・・・なんて卑怯なの!」
エリザベスが怒りに任せてそう叫んだが、Aは表情一つ変えずに再び扉の方へ向かった。そして部屋を出る寸前、エリザベスに背中を向けたまま、一言だけ切なげに呟いた。
「_____それが海賊よ。」
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バーツ(プロフ) - 初めまして。今回の作品で改めてパイレーツ・オブ・カリビアンが好きになりました。とても素敵なお話でした。これからも主人公たちの冒険を見れることを心より願っています。 (2023年2月5日 16時) (レス) id: fdda18a68f (このIDを非表示/違反報告)
の〜ん(プロフ) - 初めまして。一昨日金曜ロードショーで映画を見て、また再熱しました!作品の方ですが、読み始めると止まらないくらいとっても面白かったです!素敵な作品に出会えてよかったなと思いました!本当にありがとうございました! (2023年1月22日 23時) (レス) id: b67a47aa93 (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - はじめまして!この素晴らしい作品に出会えたことにとても感動しました。とても面白かったです。最高!! (2022年9月12日 13時) (レス) @page36 id: 345a1df315 (このIDを非表示/違反報告)
oceane(プロフ) - つじさん» 初めまして。最後まで読んでくださった上にそう言って頂けて、感謝の気持ちでいっぱいです...!こちらこそ、暖かいお言葉ありがとうございます。 (2021年9月12日 22時) (レス) id: 8c5911a62b (このIDを非表示/違反報告)
つじ(プロフ) - 初めまして、公開から何年もたった今、こうしてこの作品の小説が読めることに感動しました。とても面白かったです、本当にありがとうございました。 (2021年9月12日 3時) (レス) id: 87b029d90b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:oceane | 作成日時:2018年12月19日 21時