第17話 ページ19
「じゃあ、これを落とすわよ。」
「この船には略奪品が山ほどある。ただの金貨に興味などない。」
そう言ったものの、金貨を出した時バルボッサの顔色が少し変わったのをエリザベスは見逃さなかった。なので、すました顔で言った。
「分かったわ。何の価値も無いのなら、持っていても無駄ね。」
そしてその直後、金貨の鎖を持つ手を緩め、海に落とすかのようなそぶりを見せた。すると、海賊達は狙い通りの反応をした。
「やめろ!」
バルボッサが慌てて引き止めたのを見て、エリザベスは勝ち誇ったような笑みを浮かべた。一方バルボッサはふっと笑うと、エリザベスの方へ歩み寄った。
「名前は?お嬢さん。」
「ミス・・・ターナー。総督の屋敷のメイドよ。」
エリザベスの口からとっさに出てきたのは、ウィルの苗字だった。海賊達はターナーという名前を聞いた時、顔を見合わせ、何かを呟いた。
「何故メイドがそのようなものを?」
「盗んだわけじゃないわ。」
「よし。それを渡せばここから出て行って二度と来ないと約束しよう。」
エリザベスはバルボッサに金貨を渡した。バルボッサは満足げに頷き、振り返って乗組員達に出港の用意をするよう命じた。エリザベスは慌てて歩き去っていくバルボッサの後を追いかけた。
「待って!私を港に返してくれる約束でしょう?」
そうエリザベスが声を張り上げると、バルボッサは振り返って何かを言おうとした。と、その時。
「離しなさい!聞こえないの!?離して!!!」
怒りに満ちた声がいきなり背後から聞こえてきた。その声は高かったので、叫んでいるのは女性だということは簡単に見当がついた。そして同時にその声には妙に聞き覚えがあった。
バルボッサは一瞬目を見開くと、声のする方向へ急いで歩いて行った。乗組員達を押しのけ、連れられてきた女の方へつかつかと歩み寄る。そして彼女の姿を目にした瞬間、息を飲んだ。
見事な黒髪に縁取られた、素晴らしく整った顔。すっと通った鼻筋に堅く結ばれた薔薇色の唇。そしてこちらの方を鋭い眼差しで睨みつけているのは、海のように深い青の目____
バルボッサが見間違えるはずもなかった。
何故なら、そこに立っていたのは、
「ミス・ブラックウッド。また会うとはな。」
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バーツ(プロフ) - 初めまして。今回の作品で改めてパイレーツ・オブ・カリビアンが好きになりました。とても素敵なお話でした。これからも主人公たちの冒険を見れることを心より願っています。 (2023年2月5日 16時) (レス) id: fdda18a68f (このIDを非表示/違反報告)
の〜ん(プロフ) - 初めまして。一昨日金曜ロードショーで映画を見て、また再熱しました!作品の方ですが、読み始めると止まらないくらいとっても面白かったです!素敵な作品に出会えてよかったなと思いました!本当にありがとうございました! (2023年1月22日 23時) (レス) id: b67a47aa93 (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - はじめまして!この素晴らしい作品に出会えたことにとても感動しました。とても面白かったです。最高!! (2022年9月12日 13時) (レス) @page36 id: 345a1df315 (このIDを非表示/違反報告)
oceane(プロフ) - つじさん» 初めまして。最後まで読んでくださった上にそう言って頂けて、感謝の気持ちでいっぱいです...!こちらこそ、暖かいお言葉ありがとうございます。 (2021年9月12日 22時) (レス) id: 8c5911a62b (このIDを非表示/違反報告)
つじ(プロフ) - 初めまして、公開から何年もたった今、こうしてこの作品の小説が読めることに感動しました。とても面白かったです、本当にありがとうございました。 (2021年9月12日 3時) (レス) id: 87b029d90b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:oceane | 作成日時:2018年12月19日 21時