雀と林檎と黒真珠

第14話 ページ16

ジャックの思いがけない一言に、Aは驚いて声も出なかった。ノリントン達に怪しまれないよう持ち物をつける手は止めずに顔を上げてジャックの目を見つめた。


ジャックの目はどこか楽しげで、Aの反応を面白がっているようだった。たったの一言で動揺してたまるか、とAは心の中で呟き、ジャックを睨んだ。

だが自分でも気づいていた。ジャックの一言を聞いてから、頬が熱い。耳はもう真っ赤だろう。自分では制御できない胸の高鳴り。Aは悔しげに目を逸らした。




この男は、本当に、どこまでも＿＿＿






「ずるい人。」




Aの口から出てきたその一言を聞くと、ジャックはニヤッと笑い、ノリントン達にも聞こえるように言った。



「それが海賊さ。」



その瞬間、ジャックはもう一度手錠を動かし、Aの体の向きを変えた。そして彼女のこめかみに銃口を当て、じりじりと後ずさりしながら、高々と宣言した。



「諸君！今日という日を覚えておくといい。
　このキャプテン・ジャック・スパロウを捕まえそこなった日だ！」



そう言い切ると、ジャックはAの背中をノリントン達の方へ押し、自分はロープを掴んで一気に上昇していった。海兵達全員が呆気にとられていたが、すぐにノリントンが我に返って命令を出した。


「撃て！」


だが弾は一つも当たらなかった。Aにしてみたら、海兵達の銃の腕はかなり悲惨なものだった。自分だったら一発で当てられるのに、と呆れた眼差しで様子を見ていた。

そしてジャックの姿はすぐに消え、海兵達が追いかけに行った。その場にほとんど誰もいなくなったところで、エリザベスがAの方へ駆け寄ってきた。


「A！大丈夫？怖かったでしょ＿＿＿」

「あ、え？私は大丈夫よ。それより、妹のコンスタンスの方が心配だわ。私を探しているはずだから、行かなきゃ。」

「そうね。じゃあまた明日、会いましょう！」


そうしてエリザベスと別れ、Aはコンスタンスを探しにパーティー会場に戻ることした。幸いコンスタンスはすぐに見つかり、二人で邸宅へ向かっていた途中、驚くべき情報がAの耳に入ってきた。


「あの伝説の海賊、ジャック・スパロウが捕まったってよ！」


＿＿＿嘘。あんなに派手な逃亡劇を見せておいて、捕まるなんて。Aはおかしくて笑いそうになった。

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