第9話 ページ11
「よし、海賊になる事が決まったとして___戦えるのか?」
ふと、ジャックがラム酒の瓶を手にしながら、現実的な疑問を口にした。バルボッサも一瞬林檎を口に運ぶ手を止め、確かにそうだ、という顔をした。だがそんな質問にも臆せず、Aは答えた。
「銃でなら、どんな的も絶対に外さないわ。」
ジャックとバルボッサは同時にふっと笑い、懐疑的な表情を浮かべた。二人ともAの話を信じなかった。銃の弾を正確に当てるのは慣れた海賊でも難しい事だし、ましてやお嬢様育ちの彼女に銃が扱えるかどうかも疑わしいと思ったのだ。
「信じてくれないのね?」
Aはそう挑戦的な態度で言うと、立ち上がってテーブルから出来るだけ離れた。ありったけの距離を稼ぐと、ドレスの隠れポケットに手を突っ込み、そこからサッと銃を出し、狙いを素早く定めていきなり撃った。
ズガァアン、と銃声が鳴り響く。その数秒後、バルボッサが自分の手にしている林檎から煙が出ている事に気づいた。驚いて見てみると、何と、掴んでいた林檎のど真ん中に穴が空いていた。一歩間違えば、自分に当たっていた事を考えると背筋が凍った。
一方、Aは至って冷静で落ち着いた顔をしたまま、微笑んでいた。
「これぐらい、朝飯前よ。
・・・でも貴方の林檎を撃ってしまってごめんなさい。違う的を選ぶべきだったわ。」
Aはそう申し訳なさそうに謝った。だがバルボッサは林檎に気を配っている場合ではなかった。ジャックも驚いた表情を浮かべている。あの距離から、あれほど正確に撃てる人はそういない。二人は認めるしかなかった。彼女の銃の腕はかなり優れている事と、この様子だと戦いにおいては心配はとりあえずいらない事を。
現実的な心配事がなくなったとなれば、もう聞く事はない。すっきりとした気分になったジャックはラム酒を飲み干すと、立ち上がってAの手を取った。
「ミス・ブラックウッド、」
「Aと呼んでくれていいわ。」
「では、A___改めてブラックパール号へようこそ!」
そう高々と宣言したジャック、そして彼をなんとも言えない表情で見つめるA。さらに新しい林檎を齧りながら呆れたような顔をするバルボッサ。後にこの三人に起こる出来事を、まだ誰も知らなかった。
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バーツ(プロフ) - 初めまして。今回の作品で改めてパイレーツ・オブ・カリビアンが好きになりました。とても素敵なお話でした。これからも主人公たちの冒険を見れることを心より願っています。 (2023年2月5日 16時) (レス) id: fdda18a68f (このIDを非表示/違反報告)
の〜ん(プロフ) - 初めまして。一昨日金曜ロードショーで映画を見て、また再熱しました!作品の方ですが、読み始めると止まらないくらいとっても面白かったです!素敵な作品に出会えてよかったなと思いました!本当にありがとうございました! (2023年1月22日 23時) (レス) id: b67a47aa93 (このIDを非表示/違反報告)
RENKA - はじめまして!この素晴らしい作品に出会えたことにとても感動しました。とても面白かったです。最高!! (2022年9月12日 13時) (レス) @page36 id: 345a1df315 (このIDを非表示/違反報告)
oceane(プロフ) - つじさん» 初めまして。最後まで読んでくださった上にそう言って頂けて、感謝の気持ちでいっぱいです...!こちらこそ、暖かいお言葉ありがとうございます。 (2021年9月12日 22時) (レス) id: 8c5911a62b (このIDを非表示/違反報告)
つじ(プロフ) - 初めまして、公開から何年もたった今、こうしてこの作品の小説が読めることに感動しました。とても面白かったです、本当にありがとうございました。 (2021年9月12日 3時) (レス) id: 87b029d90b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:oceane | 作成日時:2018年12月19日 21時