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カラカラと点滴スタンドを押しながら歩く
気にしちゃうと管が絡まりそうだし
変な所で突っかかってしまったり
やっぱりコレと一緒に歩くの苦手だって思いながら
ナースステーション前を通ると
佐久間に声を掛けられた
佐久間「あら、翔太？どこいくの」
翔太「ん、ちょっと中庭」
佐久間「ん？今から？どしたの？もう暗くなるよ」
翔太「ずっと部屋いたから
外の空気吸いたくなった」
佐久間「うーん、そっかでもすぐ寒くなるから
すぐ帰ってきなね？
てかその格好じゃそもそも寒くない？」
なんて話してきて佐久間がナースステーションからこちらに出てこようとした時ナースコールがなる
他の人も忙しそうで
佐久間が慌ててナースコールをとる
その隙にふらっとエレベーターに乗り込む翔太
中庭に出れば想像よりも寒くってびっくりしたけれどその冷たい空気も気持ち良かった
そして時間は17時8分
窓から見た時に紺色に染まっていた空は
もっと暗く夜へと移り変わって行く
そんな空を見上げればとても綺麗な月
「まんまるだ…」
月はこんなによく見えたっけ？
って思うぐらいハッキリと空に輝いていた
まだ17時代、別にこの時間に中庭にいる事が悪いことでは無いのに、この夜みたいな雰囲気の中でココにいることはなんだか悪いことをしているようで少しだけソワソワする
でもそれよりもいつもあまり触れることの無い
夜空に心がなんだか浮かれた
ベンチに座る
もうほぼ人がいない中庭
夕方ってこんなに静かだったっけ？
座ってからもう一度月を眺める
こんな綺麗な月に照らされてキラリと輝くものが
点滴スタンドなんだもんな…ここは病院、俺は病人その事実はどこにでも着いてくる
さっきの浮かれた気持ちはすっと消えて
ふと病気の事、将来の事
不安な事がふつふつと浮かび上がってくる
外が暗くなると
こんな事を考えてしまう時間が増える気がする…
明るいうちは隠れてくれていた心が
ソワソワする気持ち…
「はぁ」
透き通るこの空間で自分のため息が
ハッキリと聞こえる
軽く鼻歌を歌ってみると気持ち良く抜ける音
さっきまで病室で聞いていた曲を鼻歌で歌いながら口が動き歌詞が溢れ出す、いつの間にか結構本気で歌っていた
不安な気持ちを隠すように…
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作者名：まめり | 作成日時：2023年10月26日 15時
