OCEAN

◆25 ページ25

幼い頃、じいちゃんは優しかった。
欲しい物は何でも買ってくれてよく一緒に遊んでくれた。



ばあちゃんはもうおらんかったけど、何一つ不満はなかった。
それが変わったのは小学校3年の時。



じいちゃんが失踪した。
二ヶ月音沙汰無し。
誰もが諦めかけた時、ひょっこり帰ってきて。
…赤ちゃんを抱きながら。



その赤ちゃんには鱗が付いてたんや。
綺麗な綺麗なオーロラ色の鱗が足に。
それからじいちゃんは何も言わず赤ちゃんだけ置いてまたどっか行った。
あの時の虚ろな眼をまだ覚えてる。



必死に追いかけても…叩いても叫んでもじいちゃんは答えてくれんかった。
何かにとり憑かれたみたいに見向きもせんとただ…消えてった。





高2ん時。
連れと海に来てはしゃいで。
俺は遠くまで行って驚かそうと思った。



おらんおらんって焦ってるん見るんが楽しそうやなって思ったから。



でも、ほんまに見たことないような大波来て抵抗するまでもないまま呑まれて。
完全死んだな、終わったなって思ったのに。



気づいたらあそこにいて、なぜかじいちゃんが居て。
あの時の優しいじいちゃんが笑ってた。



凪霧那村は死者の世界やと思ってる。
でもむしろ俺はそれでいい。
じいちゃんと過ごせるなら、ここでいい。

◇26→←◇24

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す