参拾参歩目 ページ33
僕は、異端。
僕は、不良品。
……そう呼ばれてきたから、そうなんだと思う。仮面が無い、お供の狐がいない。たったそれだけ。だけど前の主も、その前の主も……そのまた前の、一番最初の主も僕を蔑んだ。
なのに、今僕の目の前に居る幼子は僕に笑いかけてくれた。……何で?
何で、『僕を歓迎する』みたいな事を言ったの?
ねぇ光忠……光忠光忠光忠みつただみつただみつただミツタダミツタダミツタダ……お し え て よ ?
「ねぇ鳴狐クン? 何を考えているんだい?」
「……別に」
にっかりの声に現実へ戻る。脳裏に焼き付いた記憶を振り払って返事をした。
「まぁ僕にとってはそこまで関係なかったことだけど……この本丸、色々君みたいな子が居るから。後で話をしてみると良いよ」
?
全く、意味が解らない。
「自覚無し、か。……後で鏡を見てみると良いよ。きっと僕の言ったことが解る」
にっかりはそれだけ言うと、僕に白い布を頭から被せた。
「わぷっ……!?」
「取り敢えず君に貸してあげよう。あまり顔を合わせたくない子も居るだろうしね」
これは……にっかりがいつも羽織っている白装束?
僕が不思議に思っていると、向こうの方から声が聞こえた。低くて、見た目にそぐわないその彼の声に……僕の毛は一斉に逆立った。
「大将、久し振りに鍛刀したのか。あ……鳴狐の叔父貴!」
「あ……あ、あう、あ……や、やげ、ん」
嬉しそうな顔をする薬研。待って、来ないで、止めて許して御免なさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……っ!
「薬研くん、彼には何かありそうだ。……僕らと同じようにね。面倒は僕が見るから、少し様子見していてあげてよ」
温かい、気配がした。そっと目を開ければ、僕の横に立っていた光忠。
「ああ……まぁ仕様がねえ。叔父貴、ゆっくりで良い。克服しような」
悲しそうな顔が見えたけど、僕には何も言えなくて。にっかりから借りた布で顔を隠した。
「おへや、あんないしよっか」
流れを変えたあの子の声は、僕の手の近くで優しく響いた。
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霧憑 幻(プロフ) - 写しの本さん» 日替わりから此方を読んでいる者です。 ちょくちょく入っている歌詞とか詩のような表現とても素敵です! 応援してます。 無理をせず、更新頑張ってください! (2016年12月13日 21時) (レス) id: a919ed2021 (このIDを非表示/違反報告)
つなれな(-.-)(プロフ) - 順位おめでとうございます!これから来る刀剣のヒントとか聞きたいです((更新頑張って下さい('ω')ノ (2016年4月4日 20時) (レス) id: 9150f75282 (このIDを非表示/違反報告)
写しの本(プロフ) - アイカさん» ……大変失礼致しました。 (2016年3月9日 7時) (レス) id: 43efac2d9a (このIDを非表示/違反報告)
写しの本(プロフ) - アイカさん» ああ……本編ではまだ書いていませんでしたが、主人公は女です。れっきとした。なので[ピーーー]とか付いてませんよ(真顔)←← (2016年3月9日 7時) (レス) id: 43efac2d9a (このIDを非表示/違反報告)
アイカ(プロフ) - 主人公は男の子ですか?女の子ですか? (2016年3月9日 7時) (レス) id: 0cd967d7be (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:写しの本 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/occasional3/
作成日時:2016年3月7日 17時