検索窓
今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:26,017 hit

22歩目 ページ22

「全く……何を忘れてるんだか覚えてないって言うんですか? 無責任な……」

これは夢。桜の木の上で見てる夢。

目の前に居るのは僕自身。

言葉には偽りなんて欠片も無いけど、僕はこの言葉を覚えていられない。

……自分で拒んでるから、ね。ああそうさ……薬研藤四郎のことだって、僕が言える立場じゃなかったんだ。

「……尤もなことだね。僕はバカらしいことだと思うのかい? この夢だって起きれば忘れてしまう。それは解ってるんだろう、もちろん」

「解っていますよ。当たり前じゃ無いですか……貴方自身のことであり、僕自身のことなんですから」

答えた僕は、凍った目を僕に向ける。僕も、冷え切ってしまった瞳で見つめ返す。存在自体は同じなのに、何故拒んでいるんだろうね?

「貴方は燭台切光忠に感化されたんです。またココに来ることになりますよ」

溜息をついた僕が、僕の胸を指す。……解っているよ、全部。何を如何するべきなのか、なんてさ……解りきっているからこそ

「如何しようも無いんだけどな」

「知ってます」

氷の放つ、冷たい光が僕らの瞳から出ていく。孤独なんて生温いくらいの冷たさを、僕は持っているんだ。

「身を守るのも良いですが、いい加減僕自身を受け入れて下さい。……まぁ、そう言っても受け入れないことくらい解ってます。何も言わなくて良いです」

「悪いね。まだ暫くの間、眠っておいてよ。……まぁ、いつかは解らないけど認めるからさ」

温かい光が目の前に現れ、僕を包み始めた。反対に、向かい合っている僕は冷たい影に呑み込まれていく。

「何、待つのは馴れてます。早いほうが良いですが、無茶して壊れることだけは勘弁ですよ」



その言葉を最後にして、僕の意識は浮かんでいった。さて、今日も無知を享受しようかな。

弐拾参歩目→←弐拾壱歩目



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (58 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
84人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

霧憑 幻(プロフ) - 写しの本さん» 日替わりから此方を読んでいる者です。 ちょくちょく入っている歌詞とか詩のような表現とても素敵です! 応援してます。 無理をせず、更新頑張ってください! (2016年12月13日 21時) (レス) id: a919ed2021 (このIDを非表示/違反報告)
つなれな(-.-)(プロフ) - 順位おめでとうございます!これから来る刀剣のヒントとか聞きたいです((更新頑張って下さい('ω')ノ (2016年4月4日 20時) (レス) id: 9150f75282 (このIDを非表示/違反報告)
写しの本(プロフ) - アイカさん» ……大変失礼致しました。 (2016年3月9日 7時) (レス) id: 43efac2d9a (このIDを非表示/違反報告)
写しの本(プロフ) - アイカさん» ああ……本編ではまだ書いていませんでしたが、主人公は女です。れっきとした。なので[ピーーー]とか付いてませんよ(真顔)←← (2016年3月9日 7時) (レス) id: 43efac2d9a (このIDを非表示/違反報告)
アイカ(プロフ) - 主人公は男の子ですか?女の子ですか? (2016年3月9日 7時) (レス) id: 0cd967d7be (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:写しの本 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/occasional3/  
作成日時:2016年3月7日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。