拾伍歩目 ページ15
「なまえはしょくだいきりみつただかぁ〜！」
二度と開くことは無いと思っていた目蓋を開いて、目の前の光景に疑問を浮かばせる。僕は消えることを願ったハズなんだ。なのに何で、ここに居る。
「あんた……薬研と似たような匂いがするな。だが……俺を写しとして見るか？」
遠い昔に聞けなくなった筈の声。視界の端に写る、薄汚れた布。洗濯しようとして手こずったような記憶が……残っているような気がしなくも無いよ。何にせよ僕には余り記憶が残っていないようだから、考えるだけ無駄かな。目を逸らし、小さなその子の方を見る。
「次の主は君かい。じゃあ僕に何を望む。例えば……そうだね夜伽、出陣、遠征に演練……折り合いでもさせるかい」
口から零れる言葉に、記憶の欠片が光る。
「んん？」
でも僕を見上げる目には、僕の記憶に在るモノが宿ってなかった。純粋で清廉潔白、なんて言葉が似合うね。まるで、まるで…まるで……まるで………あれ、何を思ったのかな、僕は。
──スパアアァァァァン!!!!──
いきなり部屋の扉……いや襖か……が開かれた。そこに居たのは……
「薬研くん、だったかな」
記憶が告げた彼の名前は、薬研藤四郎。粟田口の短刀の子だった筈。
「燭台切、のだん、な……？」
僕に頭痛の波がやって来る。あぁ、無視するのが一番だね。
「あ、やげんとうしろう！ ウワサをすれば何とやらってヤツかな！」
思考回路にあの子の声が食い込んできた。でもそれは頭が痛くなるような感じじゃ無い。寧ろ僕を気遣っている様な感じだった。……あれ、気遣いって何だったかな。…まぁ良いか。
「大将、鍛刀したのか？」
「ううん？ キツネさんが連れてきてくれたんだよ！」
薬研くんが僕の目を凝視する。あれ、瞳の奥に渦巻く……ソレは何だい。僕と同じモノのような気がするよ。
「俺っちと同じ、か…」
まぁ何にせよ、関係ないけどね。
「あ、そーだしょくだいきりみつただ！」
あの子が僕を呼ぶ。何もされたくないから、折られたくないからすぐさま返事をする。
「何だい、主」
「うおお、へんじが早いんだね……ってそれよりも！ しょくだいきりみつただはおりょーり、できる？」
「……は、え、まぁできるけど」
あぁ、素っ頓狂な声を出してしまったよ。しかもすぐに応えられなかった……。殴られちゃうかなぁ。
「僕のおてつだい、してくれないかな！」
「……え、そんな事で良いなら……」
……これは折られる。やっちゃったなぁ……。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 84人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「刀剣乱舞」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
霧憑 幻(プロフ) - 写しの本さん» 日替わりから此方を読んでいる者です。 ちょくちょく入っている歌詞とか詩のような表現とても素敵です！ 応援してます。 無理をせず、更新頑張ってください！ (2016年12月13日 21時) (
レス) id: a919ed2021 (このIDを非表示/違反報告)
つなれな(-.-)(プロフ) - 順位おめでとうございます！これから来る刀剣のヒントとか聞きたいです((更新頑張って下さい('ω')ﾉ (2016年4月4日 20時) (レス) id: 9150f75282 (このIDを非表示/違反報告)
写しの本(プロフ) - アイカさん» ……大変失礼致しました。 (2016年3月9日 7時) (レス) id: 43efac2d9a (このIDを非表示/違反報告)
写しの本(プロフ) - アイカさん» ああ……本編ではまだ書いていませんでしたが、主人公は女です。れっきとした。なので[ピーーー]とか付いてませんよ(真顔)←← (2016年3月9日 7時) (レス) id: 43efac2d9a (このIDを非表示/違反報告)
アイカ(プロフ) - 主人公は男の子ですか？女の子ですか？ (2016年3月9日 7時) (レス) id: 0cd967d7be (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：写しの本 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/novel/occasional3/
作成日時：2016年3月7日 17時
