月に叢雲【伏黒恵】 (ページ5)

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本能ページ5

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伏黒…伏黒恵。

伏黒という名字は全国に250人ほどだ。残念ながら“見える”血筋の伏黒といえば限られてくる。

甚爾の、息子？

確かにそう思えば似ている。

ざっくばらんに伸びた睫毛、切れ長な眼が。

「A…A？」

目の前で手を振られて、ようやく目の前の虎杖に気づいた。

「あ、ごめん。ぼーっとしてた」

「しょうがないよな！ここ初めてだし、慣れてないのも分かる」

「来て数ヶ月のアンタが何言ってんのよ」

野薔薇がツッコミを入れ、ワシャワシャと虎杖の髪をつかむ。

仲が本当にいいらしい。

伏黒は、まだ座っているけれど。

「恵は緊張してるってよりムッツリだから話しかけないだけだよー。気にしないであげて」

そういうお年頃だから。

他三人にプププと笑われて、伏黒は「ハァ？」と発する。

「別に…ただ人見知りなだけです」

頭を掻きつつそう言ってまた目を伏せる。

「わー！照れてら！」

茶化されてみるみる彼の顔が真っ赤になった。

「お前らもな！馬鹿みてえに仲良くなろうとしてんのバレバレなんだよ。釘崎は開幕早々スタダ誘ってんじゃねぇ」

「ハァ？私はちゃんとAに了承貰ってやってるんですケド〜？混ざりたいんならもっとハッキリ言えばいいのに」

照れ隠しか、伏黒はつらつらと事を述べる。

その様子にふと、笑ってしまった。

でも、彼はきっと憎むべき人間の息子だ。

複雑な気持ちのまま、野薔薇ら一年とスタダへ行く事にした。