参拾玖 力を求めた理由 ページ40
猗窩座サイド
俺は恋雪という女の看病をしていた。
これはなんの夢だ。なぜか懐かしい気がする。
思い出した。これは俺が人間だったころのことだ。
そして俺は鬼になって記憶を無くし、強さを求めた。
力がないと大切な人を守ることができないから。
もう守るものはなかったというのに
家族を失った世界で生きていたかったわけでもないくせに
百年以上無意味な殺戮を繰り返した。
なんともまあ惨めで滑稽なつまらない話だ。
俺は気づいたら泣いていた。
いつのまにかさっきまで敵だったはずのAがやってきて俺の背中をさすっていた。
『ごめんね。思い出させちゃって。この記憶はあなたにとって辛いものだよね。』
確かに悲しい記憶だ。
でも俺は思い出せてよかったと思った。
「俺の大切なものを思い出させてくれてありがとうございます。」
Aは安心したような顔をした。
思い出してしまうと俺は今まで何のために百年以上生きていたのかと疑問に思う。
ずっと誰かの大切な人を殺し続けてきたんだ。
そんな俺が生きる資格なんてない。
死ぬべきだ。
するとAが口を開いた。
『確かに猗窩座は多くの人の命を奪った。それは許されることではなし、罪は償うべきだよ。でもだからといって幸せになってはいけない理由はないわ。まだ死んではダメよ。』
Aは人の命を奪う鬼を許せなかったから鬼なのに鬼殺隊に入ったのだと思う。
それなのになぜ多くの人を殺した俺にこんなに優しくしてくれるのだろう。
「Aは鬼殺隊。それなのになぜ鬼で人を多く殺めた俺なんかに優しく接するのですか?」
『それは鬼はもともと人間だったからよ。鬼殺隊の人は鬼のことを醜い化け物などと言う人がほとんどよ。でも私は違うと思う。』
どこが違うのだろう。
俺達、鬼は誰かの大切な人を殺す醜い化け物だ。
『鬼は鬼舞辻無惨に無理矢理従わさせられた虚しく、悲しい存在なのよ。私は鬼舞辻無惨のことが許せない。理由は多くの人の命を奪ったから。それだけではない。無惨は今まで鬼にしてきた人、全員の人生を狂わせた。猗窩座だって狂わせられた一人よ。』
俺も被害者だと言いたいのか。
Aのように自我を保って人を食べずにいる鬼もいるのになぜ?
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マリイ - 妓夫太郎大好き過ぎて 妓夫太郎優しいから (2022年5月13日 0時) (レス) @page47 id: 70be676ed1 (このIDを非表示/違反報告)
かコ - あ、好きです!凄い更新楽しみです! (2020年5月22日 22時) (レス) id: 5719c88e22 (このIDを非表示/違反報告)
さゆ - この作品、すごく面白いです!更新楽しみです!頑張ってください! (2020年5月22日 15時) (レス) id: 75c7f9d54b (このIDを非表示/違反報告)
あやめ(プロフ) - めちゃくちゃ面白くて続きがとても気になります!これからもがんばってください!更新楽しみに待ってます! (2020年5月22日 14時) (レス) id: 2cb5bf810d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:舞菜 | 作成日時:2020年5月14日 1時