きゃ！どんどん強くなっちゃう！3 (ページ26)

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『貴方にはわかるの？』

「わかるわけない。だから聞いているんだ」

『あっそう』

少し苛立ちを込めてそう一言だけ返す

じゃあなんださっきまでの会話は
そもそもクロロの人を試すような、それで自分は答えを知っているかのような態度が気に入らない

食後のコーヒーが運ばれる

『また次会ったときに聞かれるのもうんざりするから答えるけど。
確かに私と貴方は似ているとして、それは始まりに過ぎないでしょう？
結果、私はこっちにいて、貴方はそっちにいる。
私はそっちを選ばなかったから、選んだ貴方を見るととても可哀想に思う。
それでも貴方は、わざわざこっちにまで手を伸ばして引き摺り込もうとしてくる。
だから私は貴方が嫌いだし、貴方を避けるのよ』

コーヒーをゆっくりと飲んで一息ついた

「なんだそっちか。」

本心からさらっと出た言葉
私はまたムッとしたが、今度は心に留めた

『決して貴方の好意がうっとしいからとか、ましてや能力が怖いからとか、そんなんじゃない。

貴方にはそんなことかって思うようなことで、無意識にする行動が私を怖がらせるのよ』

どうせ言っても分からない

そうやって生きてきたこいつからすれば、息をするのと同じだから

それでも理解はできる？

私は奴の真っ黒な瞳を確と見た

「言ってることは理解できるよ。でもどうしたらいいか分からない」

『貴方にはきっと無理よ、もう』

昔のことを思い出した。
クロロが私を助けようとしてくれた時のことを
あの黒曜石のような瞳を、柔らかに下がる眉尻
純粋に気遣う気持ちだけに伸ばされた手と、
私の肌に触れるときに少し強張った指先も

あの時のクロロはもうどこにも居ない

人間の心をあの街へ置いて行ったのだろうか

『私、本当にあの時助けようとしてくれた男の子が貴方だって、今でも信じられない時があるの』

これ以上は野暮なこと

『貴方、変わったわ』

とっても悲しい方向に
あのまま育っていたなら私たちは友好的だっただろう

でもきっと、出会いすらしなかった

そんなもんだ世の中なんて

「今の俺には手遅れか…」

少し伏せた目は虚空を見つめていた
昔のことを思い出しているのだろうか

奴が何か言い始める前に、私は立ち上がった

少し遅れて見上げた奴を見下ろして私はにっこり笑った

『今日は素敵な席をありがとう。ごちそうさま』

奴が言葉を発する前にさっさとレストランを後にした