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レストランに入り案内されたテーブルにはクロロが座っていた

夜景を一望できる窓際の席

こちらに気がついた彼は他所向きの人懐こい笑顔を私に向けた

「久しぶり、会えて嬉しいよ」

『お久しぶり、素敵な席ね』

そう言って夜景も見ずに席に着く
クロロは片方の眉毛を上げて私を見た

「もしかして高い所が嫌いだった?」

『まさか、高いところだーいすき』

わざと目を見開いて肩を上げた
高い所は好きでもないし嫌いでもない
夜景も好きでもないし嫌いでもない

「あはは、お気遣いありがとう」

『いいえ、こちらこそ』

ウェイトレスがシャンパンを持ってきた
二つ注がれたそれをそれぞれが掲げてグラスを鳴らす

クロロは半分ほど飲んでテーブルに置く

私はクロロに合わせてグラスを置いた

「…苦手なのか?」

『うん、苦手。だから仕事中は飲まないことにしてるわ』

「今は仕事中ってことね」

『もちろん』

私の貼り付けた笑顔を彼はよく思っていないことは分かっている

「いつになったらAの素の姿を見せてくれるのかな」

『ふふ、冗談が上手いのね』

運ばれてくる前菜に手をつける
私の返答には特に気にすることもなく
しばらくは静かに食事を楽しんだ

「前回の依頼の件で呼んだんだけど、元気そうで良かった。実際にこの目で確かめたかった」

メインを待つ間、おもむろにそう言ったクロロを見る
やっぱりあの真っ黒な瞳を私は長く見ていられないようだ

『ヒソカから大体のことは聞いていたでしょう?』

「ああ、けど今思えば特異で強力な能力だ、Aへの体の負担は大きいのは当然。なのに、俺はそれに気づけなかった。きっとほかに方法があったはずなのに、それしかないと思い込んだ」

『あれが最善よ?』

「Aが気を失った時、目の前が真っ暗になった。こんなありきたりな表現をまさか自分が使うとは考えもしなかったよ」

『…』

嫌だなこの流れ
私はこの話題から逃れるように窓の外の夜景に視線を向けた

クロロは少しだけ間を置いて続けた

「Aはいつも俺にだけ機会を与えてくれないね」

クロロは自分のグラスを飲み干して、私のグラスに手をかけた

片手で持ち上げて、静かに口に当て、金色に泡立つ液体を流し込む

あの苦手な目が私を捕らえる

「それでもA、君は俺を否定することは出来ないはずだ」

あっという間に空になった私のグラスを、クロロは丁寧にテーブルへと置いた

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設定タグ:HUNTER×HUNTER , ゾルディック , ヒソカ   
作品ジャンル:アニメ
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逆叉(プロフ) - 初めまして!一気読みしてしまいました…!めっちゃ面白いです!暑い時期ですので、お身体を大切になさって下さい。応援してます! (2020年8月19日 23時) (レス) id: 312e15def1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ふぇもふぁ | 作成日時:2020年6月23日 21時

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