King of Curience【オリジナル】 (ページ9)

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7,vale ページ9

「おかえり、ほら風邪ひくからあったかい格好しなさいよ」

母さんは、まるで何もなかったかのように優しかった。

その優しさが、俺の口を開かせた。

「・・・ねえ、母さん」

「なあに？」

「母さんは、その・・・こうなるって分かってた？決意してた？」

「ええ」

「俺が出ていくことも？」

「もちろん」

「俺のこと、五億人の人が待ってるって。でも俺は、母さんと暮らしていたい」

「――悠。あのね。お母さんも寂しい。悠が遠くに行ってしまうのは、すごく悲しいわ。でもね」

「そんなに大勢の人の役に立てる。それって、とても光栄なことだと思うの」

「っ――――」

急に涙が出てきた。最初は大粒だったが、次第に滝のように。

肯定されたら、やっぱり・・・行かなければならない。母さんと離れなければならない。

その事実が、俺には重すぎて、悲しすぎた。

「だから、貴方は五億人の人々のために行かなくちゃ。人生最大の大仕事じゃないの。ほら、貴方を必要としてくれてえいるのよ」

母さんは、俺のことをそっと抱き寄せてくれた。そのぬくもりに、また涙が止まらない。

「っう・・・母さん、ごめんね・・・今まで、育ててくれたのに・・・親孝行もしてないね・・・」

「いいのよ。貴方が向こうで素晴らしいことをしたら、それが全て親孝行よ」

「ッ今まで・・・本当に、ありがとう・・・」

「ううん。でも、たまには会いに来てね。寂しいわ」

気がつくと、母さんも泣いていた。俺は、母さんを抱き返した。世界で一番の愛をこめて。

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次の日、俺は旅立ちを決意した。