King of Curience【オリジナル】 (ページ30)

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5,scratch ページ30

「よう、マリウス。帰ってたのか」

マリウスに向かって片手を上げたのは、イグニスだった。

「イグニス。・・・少々厄介なことが起こりましてね」

マリウスが難しい顔をする。

「そうか。何があった？」

「ハイデラの少年王・・・彼が、地球で陛下の親友を装っていたのです。陛下は、相当ショックをお受けになった様子です」

「ハイデラのか？一体何でそんなこと・・・まさか、監視？」

イグニスの表情も硬くなる。

「何故だかは分かりませんが・・・恐らく、陛下が地球に渡ってすぐに、情報がハイデラに行っていた・・・」

「・・・そうか。何か俺に出来ることがあったら、言ってくれ」

「ええ。有難うございます」

イグニスは、訓練場へと足を進めた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「(親友、ね・・・)」

イグニスは、訓練場へ向かう道中、考えに耽っていた。

廊下に人が居ないため、カツカツという靴の音だけが反響する。

「(そんな奴、居たな・・・。相手がどう思っているかはさて置き)」

『君も神童？じゃあ一緒だ！！宜しくね』

『君、凄い強いんだね！！俺びっくりしちゃった！』

『――今日から、軍曹、って呼びます』

「――軍曹。イグニス軍曹」

「・・・ハッ、何だ」

声を掛けられて、我に返った。

赤髪の青年。

「しっかりして下さいよ。大事な鍵、落としてますよ」

「――ああ、済まない」

何故だか分からない。

胸にぽっかりと穴が空いた感覚。

「・・・では、これで」

イグニスは、立ち去る青年の後姿をただ見つめていた。

やがて、廊下にはまたイグニスしか居なくなった。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

青年は、一人廊下を歩いていた。

「―――いつになったら、あんたは俺を見てくれるんだ。なぁ、イグニス」

青年の独り言は、誰の耳にも届くことなく、容赦なく壁に吸収されていった。

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別の日。

俺はまだベッドにもぐりこみ、眠るわけでもなく横になっていた。

「―――俺がこんなんじゃ、駄目だよな・・・」

駄目だなんて、分かっている。

分かっている、けど。

そんなことを一人考えていると、誰かがドアをノックした。

「はい」

返事もせずに、入って来たのは――。