Be My Last (ページ7)

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「A、2番卓バッシングしといて」

「はい」

きらびやかな衣装をまとったダンサーが踊る。男たちはそれを肴に酒をあおる。
ここへ来てからはや1ヶ月、まったくしょうもないが仕事を覚え始め、その働きぶりたるや素晴らしいものだ。

あれから特に向こうからの接触はなく、されどいつも見られているような視線は感じる。

なので、こうしているのが1番ではあるのだが…毎日フルタイムで働き、もはやバイトリーダーになる勢いである。

そろそろ仕掛けないとな…と思いつつ、今日も店を後にする。その矢先、

弟「やぁ、俺のこと覚えてます？」

「っ！」

弟者さんが立っていた。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

一杯だけ付き合ってもらえませんか。
願っても無いターゲットからのチャンスに即諾し、近くのバーへ連れてきた。

弟「すみません、驚いたでしょう。この間近くに来た時Aさんを見かけたから」

「なるほど…でも嬉しいですよ」

色んな意味で。でもやるなら1人ではなく3人まとめてが良い。1ヶ月もわたしを見張った慎重さは、後々厄介になりそうだ。

弟「まさかパブで働いてるとはね…勝手に花屋さんとかで働いてるかと思ってましたよ」

「花屋って…メルヘンですね。そういう弟者さんは、どんなお仕事してるんです？」

弟「俺は…フリーターです。転々と色んなことしてて、今日は配達の仕事でした」

核心はつかない腹の探り合いが続く。まったくなぜ今訪れてきたのか。
見たところ銃は持ってない。素手か仕込みの武器で殺そうとしているなら、とんでもない飛び道具を出さない限り負けない自信がある。
殺しではなく偵察にきたなら、波風立たせずお話しして終わりにしよう。

「あの夜はすみませんでした。お兄さんを不機嫌にさせたみたいで」

弟「いえ！あれは兄貴が…兄貴が短気なだけなので大丈夫です。おついちさんもまた会えたらって言ってたし、それに…」

「それに？」

弟「今日は俺が会いたくて来たんです」

「へ？」

素で声を出してしまった。弟者さんはするりと私の手を握る。
あ、そういう、ハニートラップ系？女から男ではなく、男から女に？

思いっきり疑問符を浮かべるわたしに、弟者さんは続ける。

弟「一目見た時からその…すごく素敵だなって」

「………ええと…それはどういう……」

弟「俺、あなたが好きかもしれません」

はあ？と口走りそうになった暴言を、一気にグラスのウォッカとともに飲みこんだ。