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優しい風が頬を撫でる。
暖かい、今は昼なのだろうか。昼…今日は仕事はないんだっけ…。


「ん…」


弟「あ、起きた?」


上から降りかかる声に瞼を開ける。この人は…


「あ……、いって!」


弟「動かない方がいい、結構傷深いですよ」


「手当…何で私に」


弟「その話はみんな揃ってからしよう。ちょっと待っててね」


弟者さんはそう言って部屋を出て行った。
私はベッドで、痛めた傷口をさすり周りを見渡す。

ここは、彼らの住処なのだろうか。
部屋にはベッドと椅子、隅に私の上着や武器が置いてある。
包帯に巻かれた体をみたところ、私を殺す気はないようだ。


『もしかして情が移ったか?なあ、A』


ふと、恵比寿の言葉が蘇る。そうだ、私は奴に殺されかけた。なるほど、彼らしい汚い手だ。
まんまと引っかかるなんて、


乙「おはよ、Aちゃん!具合はどう?」


兄「おい遅えぞ」


弟「だったら持つの手伝えっつの!」


扉を勢い良く開け、駆け寄ってきたのは乙一さん。
続けて小さな鍋と皿がのったおぼんを持つ弟者さんと、兄者さんがやってきた。


「…………」


兄「おい、まだ寝ぼけてんじゃねえの?」


乙「そんなに警戒しなくて大丈夫だよ、僕ら君を殺そうなんて思ってないから」


「…私は殺すつもりでいました」


最初から、と付け加える。
でも結局、殺せなかった。まさに情が移ったと、やつに笑われても言い返せない。


弟「でもAさん、兄貴を庇ってくれただろ」


「あれは…まぐれ、です」


兄「まぐれで敵の為に弾受けんのかお前は」


兄者さんが笑う。その首と手は、同じように包帯で巻かれており、痛々しい。


乙「さ、お腹すいてない?2日間丸々寝っぱなしだったんだから」


「いえ、あの…何故ですか?」


きょとん、とする3つの顔。何がと言わんばかりに続く言葉を待つ。


「だって私、殺そうとしたんですよ。斬りかかったし、
結果的に助けたかもしれないけど、そんな奴にこれだけ良くするなんて…」


理由がわからない、と。自分で言葉にしながら居た堪れない気持ちになり、声が細くなる。


弟「俺さ、Aさんは絶対いい人だと思ってたんだよね…これが理由!」


今度は私がきょとんとする番。
屈託のない弟者さんの笑顔に、まだ夢を見ているのかとぽかんと口を開けた。

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キエ(プロフ) - ユメさん» 嬉しいお言葉、ありがとうございます! (2019年4月29日 22時) (レス) id: 7ecf668470 (このIDを非表示/違反報告)
ユメ - 内容こってて好きだな (2019年4月29日 1時) (レス) id: 8bc30f3fbe (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:キエ | 作成日時:2019年3月31日 22時

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