Be My Last (ページ31)

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「おかえりA」

扉を強引に開けたその向こう。
お目当の恵比寿は、1人でいつものようにどでかいソファに座っていた。

ミッションを受けに何度も訪れたこの部屋。
ざっと見渡したが、銃や側近が隠れている気配はない。

「俺はAと話がしたいんだ」

「…話すことはない」

「まあ聞いてくれ。そのために側近は部屋の外に出したし、銃も持っていないんだ」

「私は…「俺はな、謝りたかったんだよ。あのホテルでお前ごと撃っただろ」

この状況とその言葉に、やや拍子抜けする。
だが銃と刀をもつ手は力を入れたままだ。

「まさかお前が殺せない相手がいるなんてな…しかも今はそいつらと組んでるときた。惚れたのか？」

「黙れ」

「そう怒るなよ。でもお前が抜けて気づいたんだ、俺の一番の武器はお前だったと」

乙『Aちゃん、油断しないでね』

乙一さんの声に応答するように咳払いをする。
苛立ちと焦る気持ちが、少し和らいだ。

「あんたはいつも回りくどいんだよ、何が言いたい」

「やれやれせっかちだな…また部下になって欲しいってことだ」

「ごめんだね、私はあんたが心の底から大嫌いだ」

わざとらしく肩をすくめて萎縮するポーズを取る。
もう殺してしまった方が早いと、構えた銃を握り直す。

「残念だ、とてもね。でもお前のお袋さんはどうする？何のためにうちに入ったのか忘れたのか？」

その言葉に、少し反応してしまう。
目ざとい恵比寿はもちろんそれを見逃さず、口角をあげた。

その時。

弟「オラァ！」

突然の怒号とともに、背後から弟者さんが現れる。

「参ったな、俺の部下を全員やってきたのか？」

弟「大体はな。さあ、あんたの首を頂戴するぜ」

「はは、まあ落ち着いてくれ。俺はAと大事な話をしているんだ」

弟者さんの目を見て、諭すように頷く。
私と恵比寿を交互に見て、銃の構えをやや落とした。

「弟者とやら、Aが何故ここで働いていたか知ってるか？」

弟「あんたが脅したからだろう」

「それは違う。こいつの父親がやらかしたツケを俺が払ってやったんだ。それを返すのは家族の務めだろう」

弟「母親を脅迫材料に使ってだろ、汚いな」

「慈善でやってるわけじゃないんでね。でもおかげでいい武器になった。
…さ、A。母親を殺されたくなかったら、今ここでこの男を殺せ」

息が詰まるほどの緊張感。恵比寿の笑い声だけが部屋に響いた。