31話 半分こ ページ33
〜伊黒side〜
A「師範の苦しみを半分私にも分けてください」
まっすぐに俺を見つめるAの目は、俺を捕らえて逃さない。
思い返さずとも、今まで自分から誰かに過去を話したことはない。長い付き合いである他の柱でさえも。
もちろん、お館様や煉獄など俺の過去を知っているやつもいるが、自分から他人に話すことは決してなかった。話したいと言う気持ちになることなんて一度もなかったのだ。
何より、俺の過去を知って距離を置かれるのが怖かった。
俺のこの穢れた血に気付かれることで避けられることが怖かった。
しかし、Aを見るとそんな考えは杞憂なのかもしれないと心の何処かで思うことができたのだ。
Aの過去を知った時、俺は驚いた。
だが、その反面自分と近しいものを感じ、正直安堵感もあったのは事実だ。
欠点のあるもの同士、分かり合えるのではないか。
そう思った。ずっとずっと探し求めていた自分の片割れに出会ったような気持ちになった。
Aになら話してもいい…
そう思わざるをえなかった。
A「師範…」
俺の手は何故か震えていた。
そんな俺の手をAはそっと握る。
Aの手が触れたところから、体中に温もりが広がる。まるで心が溶かされていくようだった。
伊黒「昔…」
俺は誰にも話したことなかった過去をこの日初めて口にした。
話し終えた後、Aは泣いていた。
伊黒「どうして、お前が泣くんだ」
冗談めかしていつものように皮肉を言う。
A「師範だって泣いてるじゃないですかー」
大粒の涙を流し、泣きじゃくるAが言った。
俺が、泣いてる…？
俺はAの言葉が信じられず、自分の手を頬に当てた。
確かに濡れていた。
そうか、俺は泣いていたのか。
A「師範師範…」
俺は泣きじゃくるAをあやすように、Aの頭を胸におさめる。
こんなにも俺のために涙を流してくれるAが愛おしくて仕方なかった。
伊黒「A」
A「はい、」
彼女は大きな瞳に俺を映した。
伊黒「俺の苦しみを半分くれと言ったな、それは図々しい願いじゃないか？」
そう言うとAは困った顔をしたが
俺は続ける。
伊黒「お前の望み通り俺の苦しみは半分くれてやろう。だが、お前の悲しみを俺に半分くれはしないか？」
Aは一層瞳を大きくした後、はい。ととめどなく涙を流す。そんな2人を美しい半月は照らし続けた。
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みぃたん(プロフ) - 林檎さん» ありがとうございます！続編はもっともっと楽しんでいただけように、がんばって書きます♪ぜひぜひ覗いてみてくださいね！ (2020年2月4日 0時) (
レス) id: 0d90eb6cba (このIDを非表示/違反報告)
みぃたん(プロフ) - ドラゴンちゃんさん» 応援ありがとうございます！続編も少しずつではありますが更新していきますのでそちらも読んでいただけると嬉しいです♪ (2020年2月4日 0時) (レス) id: 0d90eb6cba (このIDを非表示/違反報告)
みぃたん(プロフ) - 夏蜜柑さん» 続編も伊黒さんの魅力たっぷりに書けるようにがんばりますね♪いつもありがとうございます！ (2020年2月4日 0時) (レス) id: 0d90eb6cba (このIDを非表示/違反報告)
みぃたん(プロフ) - カンナさん» ありがとうございます！伊黒さん素敵ですよね！またよろしければ続編も見てくださると嬉しいです♪ (2020年2月3日 23時) (レス) id: 0d90eb6cba (このIDを非表示/違反報告)
林檎 - うわあああ(嬉しさの叫び） 楽しかったです！推しは伊黒さんです！楽しかったです！(大切なことなので二回言いました) (2020年2月1日 22時) (レス) id: 618a98841b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みぃたん | 作成日時：2020年1月13日 11時
