29話 眠れない夜 ページ31
私が退院してからしばらくが経った。
その日、私は骨折した右腕の痛みでなかなか寝付けずにいた。
A「…全然寝れない」
痛み止めでも飲むか。
そう思って私は水を取りに台所へ向かう。
台所へは師範の部屋の前を通っていかなければならなかった。
もう午前3時を過ぎた頃だ。師範もさすがに眠っているだろうと、静かに通り過ぎようとした時、
微かに声が聞こえた。
私はしばらく師範の部屋の前で耳を凝らしてみると、確かに師範の部屋の中から苦しげな声が聞こえたのだ。
どうしたのだろう…
トントン
A「師範、失礼します…」
私は小さめの声で挨拶を済ませると、
師範の部屋の中に足を踏み入れた。
師範の部屋の襖を開けると、師範の性格がそのまま反映されたかのように綺麗に整頓された本棚がすぐに目に飛び込んでくる。
さらに進むと窓際に机があって、そこには甘露寺さんとの文通をするためか便箋と万年筆が置かれていた。
カチ カチ
部屋には、無機質な時計の秒針の音が響いている。
部屋の中央付近で眠る師範は時折苦しそうな声を上げ、たくさんの汗をかいていた。
乱れた寝巻きから覗く汗ばんだ白い肌に
鍛えられた無駄のない体。
時折聞こえる師範の苦しそうな声。
とても官能的だった。
私はとめどなく溢れる不純な想像を振り払い、
近くにあった手拭いで師範の額の汗を拭おうと、
師範の額に手を近づける
グッ
伊黒「誰だ!」
師範にきつく左手首を掴まれる。
A「ご、ごめんなさい。師範… 師範、うなされてたし汗も凄かったから…」
師範は私だとわかると、すぐに手の拘束を解いた。
伊黒「Aか。すまない、酷く掴んでしまったな…怪我はないか…?」
そう言う師範はとても心配そうに少し赤らんだ私の左手首を見る。
A「はい、全然大丈夫です。師範の方こそ大丈夫ですか?嫌な夢でも見られてるみたいだったので…」
伊黒「あぁ…そうだな…昔の夢を見ていた。Aが起こしてくれて助かった。感謝する。」
と言うものの、師範の表情は一向に晴れない。
師範の気持ちに寄り添いたい…
そのためにはまず、どうすればいいのだろう…
私には何ができるだろう…
そんな考えが私の頭の中を駆け巡る。
そして、その答えが
ぽつり
言葉になって溢れた。
A「師範、私の昔話聞いてくれませんか…?」
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みぃたん(プロフ) - 林檎さん» ありがとうございます!続編はもっともっと楽しんでいただけように、がんばって書きます♪ぜひぜひ覗いてみてくださいね! (2020年2月4日 0時) (レス) id: 0d90eb6cba (このIDを非表示/違反報告)
みぃたん(プロフ) - ドラゴンちゃんさん» 応援ありがとうございます!続編も少しずつではありますが更新していきますのでそちらも読んでいただけると嬉しいです♪ (2020年2月4日 0時) (レス) id: 0d90eb6cba (このIDを非表示/違反報告)
みぃたん(プロフ) - 夏蜜柑さん» 続編も伊黒さんの魅力たっぷりに書けるようにがんばりますね♪いつもありがとうございます! (2020年2月4日 0時) (レス) id: 0d90eb6cba (このIDを非表示/違反報告)
みぃたん(プロフ) - カンナさん» ありがとうございます!伊黒さん素敵ですよね!またよろしければ続編も見てくださると嬉しいです♪ (2020年2月3日 23時) (レス) id: 0d90eb6cba (このIDを非表示/違反報告)
林檎 - うわあああ(嬉しさの叫び) 楽しかったです!推しは伊黒さんです!楽しかったです!(大切なことなので二回言いました) (2020年2月1日 22時) (レス) id: 618a98841b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みぃたん | 作成日時:2020年1月13日 11時