16話 過ち ページ18
伊黒「A?」
ハッ
師範はワイングラスを置いて、私の顔を覗き込む。
A「ご、ごめんなさい… 昔のことを思い出してしまって」
私は慌てて取り繕った笑顔を貼り付けた。
でも、
無意識のうちに頬を涙が滑り落ちる。
A「あれ?なんで、なんでだろ、ごめんなさい師範、泣きたくないのに、勝手に涙が…」
私はそう言いながら必死に涙を拭くが、それとは反対に涙はどんどん溢れてくる。
伊黒「無理しなくていい」
師範はそう言って、ぽんっと
私の頭に手を置いた。
伊黒「誰しも思い出したくもない、誰にも言いたくないような辛い過去の一つや二つ持っているものだ。無理に話せとも言わない、だが、その気持ちを共感もしてやれない。他人が簡単に想像して、わかったような気になるのは違うからな。その苦しみも悲しみもきっと本人にしかわからない。だから…」
フワッ
師範の香りが鼻をかすめる。
師範の温もりを全身で感じる。
伊黒「好きなだけ泣くといい。それでAの気が晴れるなら。俺はいくらでもそばに居てやる。なにも見ないから、安心しろ。」
耳元で師範の優しい声が心地よく響く
私は心の栓が外れたように次々と言葉が溢れた。
A「師範…… 師範はどこにも行かないでくださいね、こんな罪深い私だけど嫌いにならないでくださいね、ずっとずっと一緒にいてくださいね」
師範はそう言う私に「あぁ、もちろんだ」と優しい返事をする。
私は、あの出来事以来はじめて声を上げて泣いた。
あれから私は泣き続けた。
夜が明けはじめ、空が美しい紫に染まり始める。
A「師範、ありがとうございました」
最後の一雫が頬を伝った。
その時、
ちゅ
頬に何かが触れる。
A「…………?」
ん…?
今、私の頬に触れているのは師範の唇???
さらりとした包帯の感触の奥に、柔らかく温かいものを感じる。
そして、その温もりはそっと離れた。
ぽんっ
師範は目を合わせてくれなかった。言葉もなかった。
ただ、もう一度、私の頭を撫でると、静かに部屋を出て行った。
A「師範… 」
私は師範が出ていった方をぼんやりと見つめる。
師範のキスはきっとお酒のせい。
美しい月と酒に見せられた過ちだ、
わかってる
わかってる、だけど、
A「こんなの期待しちゃうじゃないですか…」
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みぃたん(プロフ) - 林檎さん» ありがとうございます!続編はもっともっと楽しんでいただけように、がんばって書きます♪ぜひぜひ覗いてみてくださいね! (2020年2月4日 0時) (レス) id: 0d90eb6cba (このIDを非表示/違反報告)
みぃたん(プロフ) - ドラゴンちゃんさん» 応援ありがとうございます!続編も少しずつではありますが更新していきますのでそちらも読んでいただけると嬉しいです♪ (2020年2月4日 0時) (レス) id: 0d90eb6cba (このIDを非表示/違反報告)
みぃたん(プロフ) - 夏蜜柑さん» 続編も伊黒さんの魅力たっぷりに書けるようにがんばりますね♪いつもありがとうございます! (2020年2月4日 0時) (レス) id: 0d90eb6cba (このIDを非表示/違反報告)
みぃたん(プロフ) - カンナさん» ありがとうございます!伊黒さん素敵ですよね!またよろしければ続編も見てくださると嬉しいです♪ (2020年2月3日 23時) (レス) id: 0d90eb6cba (このIDを非表示/違反報告)
林檎 - うわあああ(嬉しさの叫び) 楽しかったです!推しは伊黒さんです!楽しかったです!(大切なことなので二回言いました) (2020年2月1日 22時) (レス) id: 618a98841b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みぃたん | 作成日時:2020年1月13日 11時