1 ページ2
.
「本当に来ますかね？」
立体駐車場に車を停め、ある人物を待っていると風見さんがそう呟いた。
私は後部座席から頭をひょこっと前に突き出し、答える。
「匿名のタレコミなんですよね……」
「望み薄かな」
零の言葉にそうなんだよなあと少し肩を落とす。来ない可能性だってある。無駄足にならなければいいけど……。
「この男なんですよね？お二人の同期を、その……」
風見さんの言葉で私たちの同期──萩原研二と松田陣平を思い出し、懐かしさと寂しさで少し胸が苦しくなる。
2人して押し黙っていると、気を悪くしたと思ったのか「すみません、余計なことを……」と謝らせてしまった。
「どうも引っかかる」
先に沈黙を破ったのは零だった。私は零の言葉を引き継ぐように口を開いた。
「爆弾の知識はともかく。コイツに1人で脱走の計画を練り、そしてそれを実行するほどの能力があるようには思えないですね」
「それってつまり──」
目の前をある男が横切った。脱走したというあの男だった。零も風見さんも気付いたようで、素早く車を降り、追いかける。
車の窓を割ろうとしている男に近づいて行くと、向こうも気付いたようで必死の形相で逃げる。
立体駐車場の長いスロープで逃げ道を潰すように詰め寄る。
「警察だ」
風見さんが男にそう言うと、男は「助けてくれ」と縋るように首元を見せた。そこには首輪のような──恐らく爆弾が仕掛けられていた。
「何だそれは？」
不審に思った風見さんは近付こうとする。だめ、それ以上近付いてはだめ！
「風見さん！」
私は風見さんをなんとか助けようと、咄嗟に足を動かして風見さんに駆け寄る。それがいけなかった。
「A、風見！離れろ！」
零の焦った声が斜め後ろから聞こえる。と、同時に男の首に付けられていた爆弾が作動し、思い切り爆発した。
その威力は凄まじく、小柄で対してウェイトもない私は大きく後方にぶっ飛ばされる。
受身は取ったものの、あまりの勢いで飛ばされたせいか体を強く打ち付けてしまった。全身に激痛が走る。頭も打ったようで意識が朦朧としてきた。
2人は無事だろうか、と前を見やると体をスロープの外に投げ出している風見さん、それを引き上げようとしている零がいた。
助けに、行かなくちゃ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 337人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
きりきりまい(プロフ) - ユリアさん» コメントありがとうございます。最後まで読んでいただきありがとうございました！感想が励みになります、新作も書こうと思っているのでまたどこかでお会いできたらいいですね。本当にありがとうございました！！ (2023年4月30日 15時) (
レス) id: fbf43580c0 (このIDを非表示/違反報告)
ユリア(プロフ) - とても面白かったです！お疲れ様でした (2023年4月30日 7時) (レス) @page37 id: 35eeb15dbe (このIDを非表示/違反報告)
きりきりまい(プロフ) - 未零 ♪mirei♪さん» コメントありがとうございます！未零さんの作品も楽しく読ませて頂きました。お互い完結まで頑張りましょう！ (2022年12月29日 8時) (レス) id: fbf43580c0 (このIDを非表示/違反報告)
未零 ♪mirei♪ - 私も、ハロウィンの花嫁の小説作っているんですけど…作品の進みが、尋常じゃないほどすごいです！！！！！！同じ、小説を作っている身として尊敬します！更新待ってます！！ (2022年12月24日 23時) (レス) id: 8da36c452f (このIDを非表示/違反報告)
きりきりまい(プロフ) - 名無しさんさん» コメントありがとうございます。そのお言葉が励みになります。自分のペースで最後まで更新していこうと思うので、最後までお付き合いよろしくお願いします！ (2022年11月23日 1時) (レス) id: fbf43580c0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
