167話(said：Ａ) ページ17
「Aー、転ぶなよー」
抜けるような晴天の下、俺の散歩に着いてきたAの小さな背中に声をかける。
普段はあまり行かない自然公園の芝生の上を、楽しそうな笑い声をあげながら、Aがかけていく。
くるりと振り返り、俺の名前を呼びながら、愛らしい笑顔を浮かべて手を振る姿に、手にしていたカメラを構え、シャッターを切った。
画面の中で眩い笑顔を浮かべるAの姿に満足して、カメラを肩にかけ直す。
「あろまみてー、お花さいてるよー」
「シロツメクサだな」
大きな声で俺を呼ぶAの隣に腰を下ろすと、一面に咲き誇るシロツメクサ。
真っ白な花が、風にゆらゆらと体を揺らしている。
初めて見る花なのか、Aは不思議そうな顔をしてシロツメクサの花を見つめている。
「......そういやガキの頃は、この花で遊んだな」
ふと子供の頃を思い出して、ぷつりと1輪手折る。
茎を両手で持って、相手と交差させながら引いて、どっちが先に千切れるか競ったり。
そこまで思い出して、それはこの花でやった遊びじゃなかったと気付いた。
そうだ。この花で確か花かんむり作ったりしたわ。
近所に住んでた年上のお姉さんに遊んでもらった時、作ってもらったのを思い出した。
やれるかと花をいくつか手折って、茎同士を編んでいく。
隣同士に並べた花と花の間に茎を巻き付け、それをどんどん長くして。
「おし、出来たぞA」
Aの頭に乗る長さにした茎の端を先頭の花に編み込んだら完成だ。
手先は自慢出来るほど器用じゃないが、久々に作ったものとしては、なかなかの出来だと思う。
それをポン、とAの頭の上へ。
「いいな、A。似合うぞ」
「ほんとー？」
艶やかな黒髪と、真っ白な花の対比が良い感じだ。
可愛らしいAに、再びレンズを向ける。
カシャリ、と切ったシャッターの向こうには、少し頬を染め、はにかむような笑顔を浮かべるAの姿。
「A、お姫様みたいだな」
「じゃああろまが王子様ね！」
目を細めて、屈託なく微笑むAの笑顔に、俺の心がじんわりと暖かくなる。
柄にもなく幸せな気持ちになって、口元に笑みを浮かべながら、そっと手を差し出す。
その手に、Aの小さな手が迷うこと無く重なった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 232人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「実況者」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ねい(プロフ) - 平部員さん» お返事遅くなってしまって大変申し訳ありません。書き終えた私も今後の展開を色々と想像するのが楽しいです。最後まで読んでくださってありがとうございます！ (2018年9月26日 23時) (
レス) id: 3cf28ea1ed (このIDを非表示/違反報告)
ねい(プロフ) - (*´ー｀*)さん» お返事遅くなってしまって大変申し訳ありません。無事完結することが出来ました。読んでくださってありがとうございます。 (2018年9月26日 23時) (レス) id: 3cf28ea1ed (このIDを非表示/違反報告)
平部員(プロフ) - かなり時間が経ってしまいましたが、完結おめでとうございます！！！！完結したいま、この先を想像するのが楽しいです(笑)ほっこりするお話をどうもありがとうございました！！！ (2018年7月22日 17時) (レス) id: 4be846ef1b (このIDを非表示/違反報告)
(*´ー｀*) - 完結おめでとうございます！ (2018年7月20日 19時) (レス) id: 4de10ffa38 (このIDを非表示/違反報告)
ねい(プロフ) - すうさん» ありがとうございます。少しでも彼らの幸せな1場面を書きたいという自己満の思いから書き続けてきましたが、少しでも彼らの幸せがすうさんにも届いていたのなら書き手として嬉しい限りです。彼らにはこれからも笑顔と幸せ溢れる日常を過ごしてほしいと願っております。 (2018年7月12日 20時) (レス) id: 3cf28ea1ed (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
