王族の皆様に取り合いされてます。 (ページ13)

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onze ページ13

イチジ「お前の過去の話をしてやろう。」

『私の…過去…？』

聞き間違いだろうか。
…否、聞き間違いである事を祈りたかった。

サンジ「…」

イチジ「そうだ。さっき調べてきた。」

『調べた、って…お屋敷には数え切れない人数のボディーガードや、体術に長けている警備員が居たはずだが？』

状況の理解が出来ない。
日々鍛錬で鍛えた兵士達がお屋敷を警備していたはず。

イチジ「ああ、確かにハエ共がたかってきたがハタいてそこら辺に捨てておいた。」

『なっ…』

イチジ「簡潔に言おう。…お前は、ルイーズ家の本当の家族ではない。」

周りの音が聞こえなくなった。
頭が真っ白になる感覚。

『は…？』

呼吸が荒くなる。
息を上手く吸う事が出来ない。

『な…何を言っている…？私はルイーズ家の長女で…小さい頃からずっと…お母様に躾られて…』

イチジ「その前は？」

『その前…？』

イチジ「"本当に"小さい頃からその家で過ごしたのか？」

イチジさんが何を言っているか分からなかった。
──おかしい。記憶が途中で途切れている。
頭の中に、記憶にノイズがかかる。

『はっ…はっ…どういう、事だ、？』

サンジ「イチジてめェ…！！余計な事言いやがって！！」

イチジ「知っておいた方がAの為だろう。」

『イチジ、さん…』

イチジ「何だ。」

『私……記憶が、上手く思い出せなくて、でも、私は…』

イチジ「…お前は引き取られた。ルイーズ家のあの女によってな。」

引き取られた…？私が？
私は…ルイーズ家の長女ではなかった？
ならば私は…誰だ…？

『私は…ルイーズ・Aで……あれ…？』

涙が一粒、地面に落ちる。

イチジ「お前の本当の名前はルイーズではない。アントワーヌだ。」

…聞き覚えがある。
そうか、そういう事だったのか。
その瞬間、幼少期の記憶が鮮明に蘇る。
とても優しかったお母様、私を大切にしてくれたお父様。
2人の顔には靄がかかっていて、上手く思い出せない。
でも…そうか。

『私…ちゃんと愛されてたんだな…』

涙が一粒、また一粒と地面に落ちていく。

サンジ「ごめんなAちゃん、イチジが余計な事を」

『大丈夫だ。本当の事を知れて良かった。』

サンジ「…そうか。」

イチジ「まあ今更本当の名前を知ったところで、お前は俺の嫁になるんだから関係ないな。」

…ん？嫁…？

『よ、嫁…？』

サンジ「イチジてめェ！！抜け駆けは許さねェぞ！！」

その時、誰かに抱き上げられる感覚がした。