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 土を踏む音がして振り返った千空は目を見開いた。

 「Aッ!」
 「うん、普通はその反応だよね」

 司に武器を突きつけられ、人質となったAがそこにはいた。
 当の本人は千空の方を見て微笑んでいるが。


 「もし科学の武器を作り、旧世代を蘇らせれば、既得権益を求めて争い出し、たちまち汚れた世界へと逆戻りだ。それを食い止めるためなら、俺が力で統べることも厭わない」

 「まあ、まるで暴君ね。力でねじ伏せる支配は長続きした試しがないのよ」

 「……君はこの状況分かっているのかい?」

 「わたくしは今お前に武器を突きつけられた、囚われのお姫様でしょ?小動物みたいに震えてほしいなら人選が悪かったわね。残念ながらそんなに可愛らしい女じゃないのよ。……ああ、間違っても髪は切らないように気を付けて頂戴ね。一応"高額商品"なのよ。お前に傷物にされるのは腹立たしいわ」


 常と変わらぬ微笑みを浮かべて言葉を紡ぐA。言葉にも表情にも恐怖の表情は一切見受けられない。その態度に少し苛ついたのか、司はグッと刃を華奢な首筋に押しつけた。
 白磁の肌に一筋の血が伝う。


 「……無駄話はここまでにしよう。千空、石化復活液のレシピを教えてくれないか?」


 "言わなければAを殺す"。
 司は目で訴えて、更に刃を押しつけた。


 「わたくしが死んでも、大樹が死んでも、杠が死んでも、貴方は口を割っては駄目よ、千空。何処の誰の亡骸が積み上がろうと、貴方は生きなくてはならない。……人類の未来のために」


 Aの口から発せられたのは揺らぎのない無機質な声。微笑みこそ消えたものの、真剣に千空を見つめる表情に一切苦痛の色は見せない。首から流れる血は服まで染めているのにも関わらず。




 重苦しい沈黙が流れる。
 千空の耳には早くなった自分の鼓動だけが響いていた。
 合理的を優先すると口にしながら、その実情に厚い千空に仲間を捨てるという選択肢は無かった。


 「……復活液は硝酸とアルコールの混合液だ。洞穴の奇跡の水を濾過した後、限界値96%目指して蒸留しまくったアルコールと混ぜる。奇跡の水30対アルコール70。数%ズレただけで反応しねえから、石化したツバメの羽根でつつきながら微調整する」

 「ありがとう、千空。これで君を生かしておく理由がなくなってしまった」


 司は武器を突きつけたまま、穏やかに微笑んだ。

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設定タグ:Dr.STONE , 石神千空 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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御影ゆき(プロフ) - わたぁめ ?さん» コミュ障なので万年語彙力は瀕死ですが、そう言っていただけて嬉しいです。これからも頑張りますね! (2021年3月30日 7時) (レス) id: 22b9875599 (このIDを非表示/違反報告)
わたぁめ ?(プロフ) - 凄い … 語彙力が凄い … 応援してます ! 頑張って下さい ! (2021年3月29日 16時) (レス) id: 3d31fada56 (このIDを非表示/違反報告)
真白(プロフ) - ありがとうございます!SSも読ませてもらいますね! (2020年6月27日 12時) (レス) id: 3ab5c4a85e (このIDを非表示/違反報告)
御影ゆき(プロフ) - 真白さん» TwitterにもSS挙げてるので良かったらご覧下さいませ。アドバイスは出来ないかもしれませんが、真白さんの小説も読ませていただきます♪ (2020年6月27日 12時) (レス) id: 22b9875599 (このIDを非表示/違反報告)
御影ゆき(プロフ) - 真白さん» コメントありがとうございます。電子で漫画読みながら、ちょこちょこ書いてるだけで決して上手くはないですよー。オンラインを知らないのもあってアドバイスはあまり出来ないかと…。 (2020年6月27日 12時) (レス) id: 22b9875599 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:御影ゆき | 作成日時:2020年5月23日 20時

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