わすれなぐさ (ページ4)

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ごじゅうよんページ4

悲しみや寂しさや徐々に湧き出てくるどうして？とかなんで？っていう苛立ちに打ちひしがれる時間もなく、おれにはたくさんやらなければいけない仕事があって。

覚えなければいけない振りや歌詞。考えなければいけない構成。

Aのことを考えてどうしようもなく悲しくなるのが嫌で、仕事を詰め込んだ。空いた時間はジムに行って鍛えたり。仕事のこと以外考えずにすむようにした。

『ねえまっすー、1回休んだ方がいいよ』

心配そうに声をかけてくる小山。後ろでシゲも心配そうにこちらを見ている。

「平気」

『まっすーは平気でもおれらが平気じゃない』
『飯もちゃんと食ってないでしょ』

そんなん身体壊すからもうやめて。って眉間に皺を寄せておれを叱る小山は、ずっと一緒にいるから忘れそうになるけど、おれよりも2年だけとはいえ長く生きていて“お兄ちゃん”なんだよな。

『上手い餃子、食いに行こうよ』

加『小山さんの奢りで』

『うん、奢る』

「ビールも飲みたい」

『飲も。おれ話聞くしかできないけど、まっすーが満足するまで話聞くからさ』

撮影が終わって、都合がつかなかったシゲとわかれて小山とふたりでタクシーに乗り込む。

『ジェシーが話したいことあるらしくて、あとで合流しても平気？』

「、あぁ、うん」

いつもだったら、ジェシーと付き合ってるんじゃないかと勘違いしたこともあるくらいだし、それにジェシーはうるさくて疲れるからあまり得意じゃないんだけど！なんて文句を言っているかもしれないけれど、今のおれにはそんな気力もなくて。
心身ともに疲弊しきっているんだなと他人事のように思う。
それだけ、Aの存在が大きかったんだなとも。

着いた店は完全に個室になっていて、個室に入ると周りの声は聞こえなかった。きっと小山はわざわざこういう所を選んでくれたんだと思う。

特にAのことを聞いてくる訳でもない小山と酒を飲みかわしていると、コンコンとドアがノックされる。

ジ『お疲れ様です、すみませんお邪魔します』

へへ、と笑うジェシーはおれのしっているジェシーよりも少しだけ元気が無さそうで。Aになにかあったんじゃないかと不安になる。例えば、脱退するって言い出したとか。容態が悪化して復帰は難しいとか。そもそも、社会復帰が厳しくなったのかもしれない。

一度頭に過った最悪の想定はなかなか消えなくて小山とジェシーが繰り広げる楽しそうな会話は頭に入ってこなかった。