ごじゅうに ページ2
偶然近くのスタジオでSixTONESが撮影をしているらしく、楽屋を訪ねる。
北『あ、増田くんお疲れさまです』
「お疲れ、Aっている?話したいことあるんだけど、」
北『え?』
「え?」
北『聞いてないですか?』
「なにを?」
心底驚きました、みたいな顔をした北斗は指先を顔に添えてみせた。
北『Aは体調不良で今日から一定期間活動休止なんですよ』
今日付けでお知らせも出てます、と北斗が手に持っていたスマホを指さす。
ホームページにも載ってる、ってことか。
北『ほんとに、聞いてないんですか?』
「うん、なにも言われてない」
そう言うと、『ちょっと中で話しましょう』と腕を引かれて楽屋にお邪魔することにした。
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おれは大きな男6人に囲まれて、思い出したくもない昨日帰った時の惨状を話した。
「で、なんか電話も通じないしLINEも返ってこない」
樹『俺らがかけたらでるんじゃね?さすがにメンバーだし』
そう言って、樹が通話ボタンを押すと軽快な呼出音がスマホから流れてきて。
昨日のことが思い出される。樹だと出たらどうしよう。そんなにおれは拒絶されるほどのことを無意識でしてしまったのだろうか。
液晶が涙で滲んで見えて来たときだった。
「もしもし、どうした?」
なんて聞きたかった愛おしい声が聞こえた。
樹『お前さ、なに考えてるの?』
「なにって?1ヶ月くらいかけて説明したじゃん」
メンバーには1ヶ月くらいかけて説明してから休止に入ったのに、おれにはなにも言わずに突然いなくなってしまうのか、と少しだけ苛立ちを覚える。
樹『増田くん、お前のこと聞きに楽屋まで来てくれてんだけど』
「、うん、だろうね」
京『どうしてなにも話さないでいなくなったの』
「どうしてって、」
「おれ、ちゃんと話してもらえないと困るんだけど」
なんとか絞り出た声は情けなく震えていて。
後輩がこんなにもいる前なのに。とか、彼女の前で格好つかないなとか。思うけれど、気丈に振る舞えるほど心に余裕がなかった。
「、、っ、あの」
「ま、すだくん、はメンバーではないので詳しいことはあまりお話したくないです。すみません、失礼します。」
早口で捲し立てたかと思ったら、そのまま切られてしまって。
増田くん、なんて久しぶりに呼ばれた、し。
後輩の時の話し方だったのが、Aはもうおれらの関係を終わらせたいって思っているのが嫌という程伝わってきて。
視界がグルグルと回っている感覚に陥った。
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