じゅうろく ページ16
「なんで泣くの」
近くにあった公園の駐車場に車を停める。
困った顔をして眉を下げるたかくんは不思議そうにわたしの顔をのぞきこんで。
わたしはわたしで、いつかの思い出したくもなくて蓋をしていた記憶を思い返して苦しくなる。
「ごめん、そんな嫌だとおもわなくて」
無理して言わなくていいよ、と優しく背中を撫でてくれるその声音が、顔が。
『無理に思ってないこと言うなって』と困った顔をした元カレと重なる。
すきを伝えすぎて特別感がなくなって。思ってないと思われてしまって。
『お前がもう俺の事すきじゃないのくらい分かってるよ』なんて言われたんだっけ。
あぁうん、そうだ、そんな気がする。
それからきっと“恋人”にすきだって伝えるのが怖くなったんだろうな。
それならメンバーには言えてたかくんに言えないのも頷ける。自分のことなのに妙に客観視している自分が少し面白くなってきた。
「前に付き合ってたひとに、」
「うん」
「すきだなあって思う度に伝えてたらいいすぎて口癖みたいに思われちゃって」
「それで、振られたの」
「わからず屋だね」
「トラウマなのかも、すきっていったら、こんなにすきなのばれたら、たかくんまで離れていっちゃうんじゃないかって思っちゃってるのかも、無意識だけど」
だからすきって言えないのかも。こんなに好きだけど。
自分のことなのに、ちゃんと分かってなくてごめんなさい。
「ね、A」
「うん」
両手をたかくんの大きな手で包まれる。
「おれはその元カレじゃないよ」
「そ、うだね」
「おれは何回好きって言われても口癖のように言われても毎回ちゃんと嬉しいよ」
「うん」
「だから言えるときでいいから声に出してみて、すきって」
おれすっげえ喜ぶよ、なんてフフと笑うからわたしまで釣られて頬が緩む。
「おれには言っていいよ、すきって」
「聞き飽きたりしないから」
ね?と覗き込んでくる顔はすごく、すごく優しくて。
苦しくなる。心臓がばくんばくんと大きな音を立てて指先の毛細血管までたかくんのことすきだって気持ちを運んでるみたいな、そんな感覚。
「Aが言えるようになるまではたかくんが世界一すきだなあって顔してくれてる時に勝手に嬉しくなってるね」
今とか、って耳元でたかくんの低い声がしたかと思った次の瞬間にはふにふにの唇が押し当てられていた。
外なのに。
「内緒だよ」
「っ、すき、」
「フハ、言えんじゃん」
また、唇が重なった。
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ねぎ(プロフ) - ゆきさん» ゆきさん!終わらせてみました!ありがとうございます〜(; ;)わたしも恋しくなってきたので、またいつかこの2人でお話を書けたらなと思います!読んでいただきありがとうございました!別作品もよろしくお願いします! (2022年6月21日 8時) (レス) id: ad33ce073d (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - ついに終わってしまわれたのですね…!!!バタバタしていて、読むのが遅くなり、最終回とても寂しいです… 。もしまた機会があれば、続編等ご検討ください…!!!別作品の更新も楽しみにしております! (2022年5月22日 22時) (レス) @page50 id: a9e1723e86 (このIDを非表示/違反報告)
ねぎ(プロフ) - 由乃(よしの)さん» わー!ありがとうございます!!!楽しんでいただけるような続きを書けるようにがんばります!! (2022年1月11日 1時) (レス) id: 8a17a4a235 (このIDを非表示/違反報告)
由乃(よしの)(プロフ) - きゃあーたかくんがあああ! 続き楽しみです!! (2022年1月10日 21時) (レス) @page33 id: a4b9ddb561 (このIDを非表示/違反報告)
ねぎ(プロフ) - はなさん» え〜!ありがとうございます!!これからもバンバン出します!!! (2022年1月8日 0時) (レス) id: 8a17a4a235 (このIDを非表示/違反報告)
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