殺人鬼にココアを【黒】 (ページ11)

今日:3 hit、昨日:1 hit、合計:75,540 hit

No.11 ページ11

hokuto side

残り15日、の予定。

2週間経ったAとの生活は思ってたよりものんびりしてた。

嘘じゃない、本当のことを打ち明けたのに、Aに信じてもらえるか不安で仕方なかったのにAは案外あっさり信じてくれて、というより俺たちの共愛ぶりがよくわかった。

ただ俺はAに一つだけ隠していることがある。
俺はほとんどの確率で人を殺してる。

意識が戻った時血の匂いがするんだ。

俺の体からは血が出てる訳じゃないのに俺からは血の匂いがする。もう少しもう一人の俺も殺し方を考えることはできないのかとほとほと呆れる。そんな返り血を浴びてるわけじゃないのに血の匂いがつくほどの殺し方をしているのかと思うと頭がおかしくなる。

「死刑かな......。」

風呂でぼそっと呟いた言葉は思いの外響いて大きくなり台所にいるAにバレたか少し心配でしばらく無音で過ごしてみたがAが皿を洗う音が聞こえるだけで特に何も異変はなく胸を撫で下ろす。

俺はAを殺すつもりなんかない。そんなことを言えばAが頷いてくれると思ったから。だからAが言う30日より前に出頭するつもりだ。

それが、明日。

Aにはまだ知らせていない。
出頭するなんて言ったら絶対止めるに決まってる。俺はAには幸せになって欲しい。俺なんかのせいで、幸せを、ましてや人生まで奪われるなんて可哀想どころじゃなく馬鹿がすぎる。

Aが起きる前に、出頭しよう。

場合によってはAと会えるのは、Aと話すのは。Aに触れるのは今晩が最後かもしれない。
俺はAにこのことを打ち明けた日からこのことを決めていたから。でも心の準備なんてできてる訳が無い。

Aと幸せに暮らしたかった。あの人俺がもう1人の俺と交代しなければAと幸せに暮らせたかもしれないのに。

あの時のもう一人の俺と、制御が出来なかった俺を恨む。

どっちにしろ、未来を変えることは出来ない。Aには申し訳ないけど俺はこの日だって決めてた。

明日は、、Aの誕生日だ。
Aの人生の25歳は俺と関わらない歳にしてあげたい。俺は黙って姿を消すことしかできないのかと無能さに呆れる。

本当は30代も40代も、おばあちゃんになって皺の増えたAも愛していたかったのに。

過去の俺はこんなにも。故意でもないし記憶もないのに今と未来の俺を蝕む。