夜天 ページ24
『うげぇっ……!』
突然脳天に衝撃が走った。
ぐらりと視界が回転して、気づいたら私は吹っ飛んでいた。
あれ……今殴られた?
と口の中でじわっと血の味が広がって、ようやく気づく。
横目ディオをチラリと見ると、近くにあった泥水で必死に口をゆすいでいた。
どんだけ嫌だったんだよ、近くに綺麗な川もあるのにさ。
でも、ディオにエリナちゃんと同じ屈辱……いやそれ以上のダメージを与えられたと思うと快感だった。
胸の中に溜まっていたモヤが、からりと晴れるような爽やかな気分。
私は淡い紫に染まり始めた空を見上げる。
太陽は西に傾き、ゆらゆらと水平線に没しようとしていた。
静かに夜の気配が増してゆく。
そろそろもう帰ろうか。と立ち上がろうとしたが
『う"っ……ッ』
ズキンとまだ頭が響くので、私は諦めて仰向けに大の字に寝転がった。
大人しく、日没の空でも見てよう。
とオレンジと紫のグラデーションがかった空を、ぼうっと見ていると私の視界に夕暮れの太陽に照らされてキラキラと輝く金髪が入ってきた。
『……ディオ』
私を見下ろすその顔は憎悪に満ちていた。
顔を真っ赤にさせて、怒っているのか恥ずかしがっているのかよく分からない。
何かを私に言いたそうだったが、ディオは下唇を噛んだまま何も言わずにプルプルと震えていた。
自尊心をズタボロにしてやったんだ。
その反応をしてくれなきゃ困る。
私が目を細めてヘラっと笑ってみせると、彼は忌々しそうに帰って行った。
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ディオside
暫くの間は体が熱かった。
どうしようもない怒りと羞恥が激しい波のように全体に広がっていく。
あんな屈辱的な思いをさせられたのは初めてだった。
ジョースター邸に帰ってからも、冷静にはなれなかった。
「ディオ、何処に行ってたんだい?」
「うるさい…ッ!」
ジョジョの顔を見ると、何故かあの女の気味の悪い笑みを思い出す。
夕食もほとんど喉を通らない。
あんなのはキスでもなんでもない。溶けたガムを無理やり口に押し当てられたような、あの感触を思い出して無性に叫びたくなった。
いっその事、あの女を殺してしまおうか。
と眠る前に適切な殺し方を熟慮したが、直接手を下すのは絶対に嫌だった。
アイツは疫病神だからきっと、そんな事をした際にはこっちが呪い殺される。
今日のあの事を思い出して数日は眠れない夜が続いた。
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金糸雀@Twitterよろ(プロフ) - 全ての出会いに感謝 (2月28日 3時) (レス) @page25 id: 8c9d2cd7b3 (このIDを非表示/違反報告)
地獄の番人 - 本当、好き (2023年4月19日 17時) (レス) @page44 id: 7578fd3293 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ(プロフ) - 最高です!!! (2023年2月25日 12時) (レス) @page41 id: 5ceee3abc4 (このIDを非表示/違反報告)
光と慈雨(プロフ) - 餡さん» 沢山書いてくれてありがとうございます!嬉しい言葉ばかりで感動しました、これからも頑張ります🥹 (2023年2月18日 21時) (レス) id: 6671bb5b60 (このIDを非表示/違反報告)
餡(プロフ) - とはいえこんなに素敵な物語を執筆し、その上完結に至るまでには、 相当な思考と時間を要したかと思われます!本当にお疲れ様でした。「吸血鬼とモブJK3」の今後の展開も楽しみです。これからも陰ながら応援させて頂きます…!😭💖長文、失礼致しました。 (2023年2月15日 23時) (レス) id: 493b9f8f47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:光と慈雨 | 作者ホームページ:http:// http://uranai.nosv.org/gen.php/novel/
作成日時:2023年1月27日 0時