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HERO ページ13

"キュッ、キュッ"


という、金属を磨く音がこじんまりとした店内に広がる。


「A、これも追加でやっといてくれ」


『はーい』



私がこの世界に来てどのくらいの月日が経っただろうか。


そんな思い返して感傷に浸れるほど、時は経っていないけれど、多分半年くらいはここで過ごしている。



拝啓 違う世界線の日本にいるお父様、お母様


私は今とても幸せ……という程ではないですが割と楽しく暮らしています。


でも、ふとそっちにいる皆のことを考えると寂しい気持ちになります。


いつ戻れるか分かりませんが、これからも自分らしく…戻れるその日まで、こっちの世界で頑張ります。



心の中で手紙を書いて、何処にも出さずにしまった。



ここ、カイロの生活は短い期間ではあるが、それは凝縮されてとても濃いものであった。



私はもうやり慣れたオブジェの手入れをしながら、色々な事を追想する。



「A、これそっちに置いてくれ」


『はーい』



カイロは料理も美味しいし人々も活気にあふれていて皆親切だ。


この店のおじいちゃんだって、私に仕事をくれてちゃんとお店に置いてくれるし。



何だったら今の私の生活があるのも、おじいちゃんのお陰と言っても過言ではない。



私はおじいちゃんから銀色の重たい皿を受け取ると、テーブルの上に並べた。


研磨された金属面は鏡よりも綺麗に、私を映した。


表情に何処と無く哀愁が漂っている。


自分でも何でこんなに身も世もなく憐れな表情をしているのか、分からなかった。


『………。』



私は銀色のそれから目を逸らして、新しい作業はないかと違うものを探した。



「そろそろ店開けるか……」


『うん、そうだね』


店の外に掛けてある看板を、CLOSEからOPENに変える。


そんな単純な作業が、とても難しいように感じた。


『ねぇ、おじいちゃんイチジクタルトってある?』



「ん?」


唐突な私の意味不明な質問におじいちゃんは、目を細めた。

何でこんな事を聞いたのか自分でも分からないが、今無性にイチヂクタルトが食べたくて堪らないのだ。



「……イチジクタルトは分からねぇけど、スナック菓子なら奥に置いてあるぞ」


『ですよねぇ』



出会ってきたスタンド使い達もくせ者揃いではあったが、なんだかんだ言って優しいかった。


そう、アイツも最期まで変人だったけど優しかった……のかもしれない。



「おい、どうしたA!?」


何故だか私は涙が止まらなかった。

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俺☆ - やばいめっちゃ面白いのにめっちゃ感動してる。何だこれ。 (2023年1月5日 11時) (レス) @page50 id: b2c114123d (このIDを非表示/違反報告)
Earthあーす(プロフ) - あれなんか目がナイアガラの滝になってる (2023年1月4日 18時) (レス) @page43 id: 0fcf2cea39 (このIDを非表示/違反報告)
しらとめ(プロフ) - 面白いのになんとなく泣きそうになってきます (2022年11月28日 17時) (レス) @page35 id: 353a651934 (このIDを非表示/違反報告)
地獄の番人 - DIOの代わりに空条承太郎パイセンとくっついちゃいましょう!!面白かったです。続きを楽しみに待ってます!! (2022年11月28日 1時) (レス) @page33 id: d126292683 (このIDを非表示/違反報告)
ペトリ皿(プロフ) - やばい。展開も何もかもが面白すぎる。 (2022年11月27日 18時) (レス) @page32 id: cbc38767b3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:光と慈雨 | 作者ホームページ:http:// http://uranai.nosv.org/gen.php/novel/  
作成日時:2022年9月5日 23時

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