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バーボンside
「へぇ……こんな素敵なところ知ってるなんて、随分洒落てるじゃない」
俺とミモザは2人でカウンターの席に座った。俺はスコッチを、一方彼女はシェリーを頼んだ。まさか彼女がシェリーを頼むとは滅法思わなかった。
「ミモザは大切な人を失ったことがありますか?」
「何よ……なんだか随分深刻ね」
微笑を口角に浮かべながら彼女は言った。拳銃を突きつけられた夜、俺はミモザとシェリーの間柄を隙間なく調べた。だが、全く出てこない。そこでミモザのデータベースを遡ってみると、シェリーと同じ研究室にいたことまで掴んだ。だがそれ以外は埃すら出てこない。
「大切な人を失ったことならあるわ……バーボンは?」
「ええ……僕も同じような感じですよ」
「こんな仕事をしていれば”死”とは常に隣り合わせ。瀬戸際で生きてるようなものよ……」
暫く沈黙が続いた後ミモザが続けた。
「ねぇ、バーボン……正直に言いなさいよ。こんな話するために私を呼んじゃないんでしょう?ほら、何か言いたいことが……」
「シェリー……」
俺は彼女の目が大きく見開いたのを見逃さなかった、ただ真っ直ぐ眼を向け何かの感情をぐっと抑えるように紅く色付いた唇を噛み締めて。
「彼女がミステリートレインに乗るという情報を手に入れました……僕とあなたは今、任務を共にする仲……」
「彼女のことを見つけたらどうするつもりなの?組織の命令で殺すつもり?それとも組織まで生きて帰らせ見せしめで苦しめるつもり?」
彼女は強い口調で俺に答えを求めた、多少声を震わせながら。
「僕は組織に殺せと言われても殺さない、ただ組織には死んだと見せかけるだけ」
「馬鹿ね……あなたそんなことしたら組織に殺されるわ、もしシェリーが生きていることが彼らにバレたら組織から容赦ない死の制裁が待っている」
「でも、あなたも同じでしょう……」
「一体何の……」
「恐らくあなたの失った人は、シェリー……彼女に想いを寄せている人間がいると組織に知られたくないばかりに隠してきた、違いますか」
彼女はシェリーの事となると感情が抑えられなくなる、俺が赤井の事となると同じようになるように。
「じゃあ、あなたはなんで……」
「僕も言われたんですよ……僕の大切な人に彼女を守って欲しいと」
彼女は再び前を向き釘をさすように言った『この世には隠すべき秘密と公にすべき秘密がある。私たちは絶対に棺桶まで明かしてはならない、この意味が分かるわよね?』と。
やはりどうしても俺は彼女が黒に染まりきった者だとは思えなかった。
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琳香(プロフ) - さちさん» コメントとご感想ありがとうございます(´-`)こちらこそよろしくお願いします。 (2019年10月19日 23時) (レス) id: f8b1e46d61 (このIDを非表示/違反報告)
さち - おもしろいです。続きが気になりました。よろしくお願いします。 (2019年10月19日 13時) (レス) id: c80821aeaf (このIDを非表示/違反報告)
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