海底に棲むきみ【迅悠一】 (ページ47)

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迅「何処に！？」

『ふは、今日の迅は元気だね、うかれてんの？？』

迅「Aが急にバカになるからだろ…！！」

手を引いて走れば、最初はもたついて私に引っ張られる状態だったものの、流石は男の体力。
すぐに私に追いついた。

『行先は本部。さあさあ、これから重大任務なんだから急いでー』

彼の髪が揺れる。

繋いだ手から温もりを感じる。

四六時中一緒に居た時、迅が私のモノになった気がして嬉しかった。

『うかれてもいいけど、私の事忘れないでよね。ゆうちゃん』

走りながらそう言うと、彼は一言、"うん"と呟いた。

『『ハッピーバースデー！！！！迅/迅さん！！！！』』

パンッ！！という発射音と共に、私も半ば巻き添えになる感じでクラッカーの中身が飛んでくる。

ちょいちょい、と私にだけ出水が手招きしてくれたので、私もみんなの輪の中に入っては

『迅。お誕生日おめでとう。』私も目の前でびっくりする彼にそう言った。

迅「……ま」

ま？とみんなが首を傾げる。

迅「まじかぁぁ…………。。」

へなへなと座り込む彼をみて、皆が傍に寄り添った。

迅「あのAがおれのひっつき虫になるなんて、とは思ってたんだけど…。はは、ナルホドね。グルか、みんな。」

皆それぞれ、彼へ言葉を投げかけているけど、私には迅の声しか聞こえなかったし、迅しか見えなかった。

嬉しそうに笑い、満たされたように微笑み、皆に囲まれる。

あなたが生まれてきたことに、皆が感謝して、喜んでるんだよ。

迅を見つめる視界が揺らいで、涙が溢れているのを気づいた出水が大声を出したことによって

今度は私が皆んなに囲まれてしまったのはまた別のお話。

迅悠一は今日も泣かなかった。
その代わり、今日の彼は幸せな笑みで満ちていたと、私は記憶している。