█日目 ページ41
2月5日 午前2時13分
砂浜にそう書かれている。
その文字が波に消されていく。
冷や汗が流れて、苦しくなって、私は布団から飛び起きた。
『…な、なに……。』
時計を確認すると2時18分。
私は、パジャマである薄着のTシャツと長ズボンを履いたまま 靴も履かずに外へ走り出していた。
私が夢に見たのは夢ではなく過去だ。
砂浜ってことは海。
こんな真冬の海に、海に。海に。
考えれば考えるほど怖くなる。
海水は体温より遥かに冷たいだろうに。
地面は冷たくて、足の指先から私の体温を奪っていく。
これ以上無いくらいに走った。
足がもつれて、地面に手が着く。
それでも一刻でも早く行かなければ。
あのメッセージは、絶対に私宛だから。
呼吸するのが苦しくなって、肺がギュッとなって、
口は血の味が滲む。
唾液を飲むのも辛くなってくる。
海風が私を襲う。
寒い。冷たい。痛い。
先には、脚が全て海水に浸かっている 迅の姿があった。
彼はどんどん海の続く方へ進んでいく。
嗚呼、やっぱり迅だ。
夢かと思うくらい、何度も私が思い描いた光景そのままだった。
迅、
迅。
『迅！！！！』
名前を叫んで、彼を視界に入れたまま堤防の階段をかけおりる。
砂をけって、海水に入って。足が濡れる。
私がここまで来るまでに、迅は胸まで海水に浸かっていた。
『ねぇまってよ、待ってよ、じん。悠ちゃんまって、』
海の先に何があるの。
こっちを向いて、Aはこっちだよ。
水中は冷たくて、私の体温を奪っていくのが分かる。
寒くて震える。
言いたい言葉ほど口から出なかった。
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作者名：いちごおれ?? | 作成日時：2023年2月20日 23時
