海底に棲むきみ【迅悠一】 (ページ32)

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22日目ページ32

『ご、めん……』

ピシャン、とかなり大きめの音を立てて私が脱衣所の扉を締める。

たまにあるのだ、読み逃しが。

決してシリアスな展開では無い。

家の無い私は玉狛に住んでいる。
勿論食事や洗濯、入浴もココでする。

お風呂が沸いていたので私も入ろうとしていた所、
脱衣所を開けたら変なラッキースケベが発動してしまった。

髪からは水が滴り、パンツは履いていたものの上半身は裸。

『ってか鍵閉めろよアホ！』

そう叫ぶと、髪を拭いていた半裸の迅が脱衣所から出てくる。

迅「見ても減らないから良いじゃん」

『いると思わなかったのにいるからビビったんだよ…』

細身なイメージだったから、脱げば多少筋肉がついている身体に男らしさを感じる。

私には無い体だな、とぼんやり思いながら見つめていると
"どうした？"と顔をのぞき込まれた。

『迅って男だったんだね』

迅「どの角度からおれを見たら女っていう認識になるのか教えて欲しいね」

『横顔は女だよ』

なんだそれー、と言いながら髪を拭き終わったらしい迅は衣類を手に持って
私に風呂を譲ってくれる。

迅「お次どうぞ」

小さい頃は一緒にお風呂に入ったこともあるし、特に気にはしていないが。

『迅汁かあ』

迅「豚汁みたいに言わないでくれる？」

『普通女の子を先に入れさせてくれるもんよ。』

そのまま部屋に帰ろうと歩き出してしまう迅の後ろ姿に、
『出たら部屋寄っていい？』
と言葉を投げる。

振り向き、驚いた顔を浮かべた後に
いつもの顔で"いいよ"という彼の言葉を聞いてから
私はお風呂に浸かった。

お風呂には茶色が目立つ髪が浮いていて、
私のモノか、迅のものか区別がつかなかった。

『やっぱ私が最初に入るべきだった』