海底に棲むきみ【迅悠一】 (ページ31)

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21日目ページ31

小南「ふと思ったんだけど、なんでAって迅のこと迅って呼ぶの？変な感じしないわけ？」

『なんかその話メガネくんともした気がするんだけど気の際？』

そんなの知らないわよ。
と小南が呟く。

珍しく玉狛に居る迅は私たちの会話を聞いているはずなのに、テレビに見入っているフリをしていた。

メガネくんが聞いてきた時は小南は不在だっただろうし、知らないのは当たり前なのだ。

小南は、私が迅のことを絶賛"悠ちゃん"と呼んでいた頃を知っている。
知っているからこそこうして聞いてくるのだろう。

『変な感じはー、まぁ、するけど。ぶっちゃけ苗字の方が短いし言いやすいからね。だからこそ誰も悠一さんって言わないっていう。』

ずず、と熱めのココアを啜って
まだ結構な熱を持つそれを一旦机に置いて冷ます。

小南はそんな私の行動を頬杖をつきながらじっと見つめている。

小南「そんなもんなのかしら」

『そんなもんです』

迅「さっきから聞いてたけど、本人の前でする会話じゃないよソレ」

『私迅に隠し事出来ないから…』

胸に手を当てて、優しさを表現してみれば、
彼はめんどくさそうな顔をする。

小南「それで、迅は相変わらずAって言うけどなんで？」

迅「迅さんって呼ばれてるおれがAのこと"迅"って呼び始めたら末期だろ」

それにややこしい。そう付け足す彼の後ろ姿を眺める。

『結婚してるんですかって聞かれるのも、ご兄妹ですかって言われるのも面倒臭いからね〜』

いち"迅"の意見として私がそう言葉を零せば、
ああ分かる。結構マジなトーンで返されたのだった。

同姓なんてそんなもの。

小南は、表情を変えずに"ふーん？"と言葉を零していた。
きっと納得して貰えていない。