海底に棲むきみ【迅悠一】 (ページ3)

今日:29 hit、昨日:7 hit、合計:2,451 hit

1日目ページ3

太陽が沈んでオレンジ帯びていた。
影が長くなり、今日の太陽が終わっていく。

とぼとぼと歩く私の隣には誰もいない。
同い年の子らはまだ本部に居ると言っていた。
私は一足早く家(玉狛)に帰っている。

アニメや小説の世界なら、美形の男子が私の後ろを息を切らして追いかけてくれるのだろうか。

そんな阿呆らしいことを考えながら、確実に我が家へ足は進んでいくのだった。

数分もすれば、見慣れた大きな建物が自分の前に聳え立つ。
何食わぬ顔でドアを開け、「ただいま」と一言声を出せば、もう日は落ちているのに「おかえりなさい」という女性の声が聞こえた。

『宇佐美ぃ、ただいまあ…。ほんっと、今日も疲れた…』

くたり、とソファーに倒れ込んでは、そばで笑い声が聞こえる。

宇佐美「大変だったねぇ、お疲れ様。今日は何してきたの？」

『アレだよ、出水とバトってた。挑まれたの。嫌だつったのに。』

今日の学校で忘れ物をした私は出水に教科書を借りた。その恩として模擬戦の約束をしていたのだ。

無駄な戦いで精神を消耗したくないし、そもそも模擬戦自体好きでは無い私は、いつも"丁重に"模擬戦を断っている。

しかし、「恩を仇で返すわけないよな」と圧をかけられれば乗るしか無かった。

乗らざるを得なかったのだ。

宇佐美「まぁまぁ。Aちゃんは動かなさ過ぎるんだから、たまには模擬戦やるのもいいじゃない。」

『省エネなの。』

そんなやり取りをしていれば、訓練をしていたのだろうか。玉狛のイツメンが帰宅してくる。

迅を除いて。

どうせ今も外に居るんだろう。

『あ、小南。迅いつ帰ってくるーとか言ってた？今日はみんなとご飯食べようかな。』

昨日はアイツが早めの帰宅だったので、私は部屋での食事だった。彼に会う訳には行かないから。

小南「今日はなんにも聞いてないわよ？てか、電話すればいいじゃない。」

『どうせ"おれの気なんて使わず昨日も一緒に食べたら良かったのに〜"とか言われるんだよ、ウザったらしい。電話するわけないから』

ふぅん？と、興味なさげな言葉が返ってくる。
今日はレイジさんの作った晩御飯だ。
私はみんなで食卓を囲む。
京介や、メガネくんや、千佳ちゃんや、遊真。

何気ない会話をして、チラつく過去(サイドエフェクト)を無視して
今日も一日を終えるのだった。