検索窓
今日:35 hit、昨日:7 hit、合計:2,457 hit

9日目 ページ14

手に温もりを感じた。

冷たさを帯びるその手は、死んでしまったあと彼はこうなってしまうのか、と考えさせた。

外は明るくなっただろうか。

『迅。』

布団の外に彼は居るだろうか。

迅「はーい、居ますよ。」

彼は、死んでないか。

『聞いてないよ』

これは、夢じゃないのか。

迅「おれは、ここに居るよ。」

手の甲を指ですりすりと撫でる彼の、温かさを感じて
いつから私たちは変わってしまったのだろうと考えた。

昔は、SEに苦しむ彼を宥めていたのは私だったのに。

自分をバケモノだと言う彼を視てしまって、そんな事ないと声を上げて、悠ちゃんは大丈夫だと言って退けたのは私だったはずなのに。


『悠ちゃん、何処に行くの』

迅「どこにも行かないって」

『強くて優しい悠ちゃんなんか嫌いなの』

迅「はぁ〜??急になんだよ、おれはずっと昔っから優しいし強かったろ」

冗談っぽく笑う声が聞こえる。
そんなこと言ってるわけじゃない。そういうことじゃない。
本当の理由なんて、彼にも十分良くわかっていたんだと思う。

『怪我してたのはいっつもお前だったくせに。』

迅「おれが庇ってやった時だってあったじゃん?」

『…わたし、迅って苗字嫌い。ダサいから、』

迅「んん〜…おれのせいじゃないねソレは。」

『ややこしいから、悠一ってみんなに呼んでもらいなよ。』

迅「やだよ、今更感あるし」

『悠ちゃんは名前呼ばれないから、可哀想。』

迅「思ってないだろコラ」

『思ってるよ、カッコイイのにね』

迅「そう思うんならAがおれの名前呼べばいいじゃん」

『わたしはいいの。』

なんだそれ、って、迅が笑った。
寒いよねって、ベッドの上で2人並んで座って、布団にくるまった。

繋がったままの手が暖かくなっていった。

迅に温度があったから。


『もう、悠ちゃんなんて似合わなくなっちゃったね』

迅「おれは昔っからその呼び方否定してたけどネ、」

せめて呼び捨てかくん付けにしてくれよ、なんて隣で笑う彼が愛おしかった。

いつまでも、こんな時間が続いて、怖いことも苦しいことも無くなればいいと思った。

『泣き虫だったおまえには悠"ちゃん"がお似合いなんです』

そう伝えると、私を見ないで ドアの先を見つめた彼が"うん"と呟いた。


彼はきっと、私の前では泣いてはくれない。

『せめて、私が見える範囲に居てね。』

迅「こっちのセリフ」




『ばか、視えなくなるっての。』

?⃞日目→←九日目



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (4 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
3人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:いちごおれ?? | 作成日時:2023年2月20日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。