九日目 ページ13
迅side
おれにしては、やけに早い朝だった。
迅「昨日は結構遅かったハズなんだけど…」
誰も居ない部屋に、そう言葉を零す。
勿論誰かの返事が返ってくるはずは無いし、返事を求めている訳では無い。
時計を確認すると、6時18分。
用事がある日にこの時間に起きたら確実に二度寝する。
しかし、無駄に頭が冴えてしまったようで
おれは水を飲みに行こうとリビングへ足を運んだ。
リビングに入ると、まだ中身が入っているコップがキッチンにぽつりと置かれている。
こういうの飲みかけはシンクに入れておくか、昨日の晩のうちに誰かが洗ってくれるはずなんだけどな、
不思議にそのコップを取るも、まさかおれより先に起きてきた人がいるわけ……と思考を巡らす。
迅「今日、誰が
ボスと、陽太郎、レイジさん、遊真、そしてA。
メガネくんは居るんだっけ。
昨日の帰りが遅かったから知りようもない。
陽太郎は寝てるだろうし。
遊真は、案外ちゃんと直してから行く派だったりする。小南に叱られることもあったし。
そんなことを考えてるうちに、そういえば、とある事を思い出した。
誰かおれの名前を呼んだっけ。
てっきり夢の中だと思っていたが、実は現実だったとか?
やばい、寝ぼけ過ぎていて何にも覚えていない。
あれは誰の声だったか。
おれに用事があったのか?
わからない。
別に知らなくてもいいんだけど。そう思い、ふと頬を掻く仕草をすれば、指先がやけに冷えた感触がした。
迅「水?」
おれの、頬に水。
確かにさっきコップは触ったが、おれの手に水は着いていない。
迅「なるほど。おれの部屋にわざわざ入って、触ったのか」
嗚呼、こんな事するのはあいつしか居ない。
気づけばノックもせずに彼女の部屋に入っていた。
布団の上を見ても彼女の体は一切見えず、ベッドの上で包まっているようだった。
迅「A、どうかした?」
ベッドの横に膝をついて、起きているであろう彼女に語りかける。
『…………起こしちゃった?』
迅「いや、違う。寂しかったんだろ、おれの部屋来なよ。」
『いい、大丈夫』
くぐもって聞こえるAの声は、震えていた。
おれの寝顔を見て、こいつは何を思ったんだろうか。
迅「いいから来いって、置いてけないし見逃せない」
そう言うと、観念したのか布団の隙間から華奢な手が出てきて、 握れ と言わんばかりに上下に揺らす。
おれはそんなAの手を握った。
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作者名:いちごおれ?? | 作成日時:2023年2月20日 23時