『口実』 ページ13
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少しの温かさと少しの冷たい空気が風によって運ばれて、図書室の中に入ってくる。開いたカーテンが揺れて、窓側に座ってるAちゃんの髪を吹き付けて靡いて、そんな所をつい見入ってしまう。
推薦が決まってるAちゃんは英語の勉強の為に英和辞典とノートを広げてる。
目が合うと咄嗟に目を逸らしたけど、Aちゃんがクスッと笑ってる声に少し恥ずかしい気もしながらも、一緒になって笑う。
「ふふっ笑なーにー？」
小野寺「ううん、何も…笑」
「そう言えば、秋祭りもう直ぐだね」
小野寺「あー、今週だったっけ」
「そうそう」
小野寺「誰かと一緒に行くの…？」
「んー…どうだろうね。
りなは匠と一緒に行くだろうし、
今の所誰とも約束はないかな」
小野寺「そうなんだ…
良かったら、一緒に行こうよ」
「でも部活は？」
小野寺「その日は休み」
「そうなんだ」
小野寺「勉強の息抜きにでも、どうですか…笑」
「…じゃあ、行こうかな…笑」
断られるとか、そう言うのは考えてもなかった
だけど、それでも好きだと言う事を自覚した感情も、Aちゃんに抱くものも、それらを引っ括めて考えると、Aちゃんと初めて出かける事に特別感がある。
付き合ってなんかはないけれど、それでも勉強の息抜き。それを建前に、本当はAちゃんと遊びに行ってみたくてさそった。お祭りはそんなただの口実に過ぎない。
視線が合えば、少し気恥ずかしく思う俺と反面、Aちゃんは笑ってまた視線をノートに向ける。
つい、告白したくなる衝動に駆られるけど、今じゃない事は分かってる。
「ふふ笑楽しみだね」
小野寺「…うん、そうだね笑」
「太志はお祭りとかよく行くの？」
小野寺「んー…時と場合？
友達に誘われれば、その日何も無ければ行く」
「そうなんだ」
小野寺「Aちゃんは？」
「ふふ笑りなにずっと誘われ続けて殆ど毎年行ってる」
｢｢ ふふ笑 ｣｣
小野寺「すごっ笑」
「だから殆どのお店の店主と顔見知り」
小野寺「ドヤ顔だなぁ…笑」
「凄いでしょ」
小野寺「確かに笑」
「…出店と言ったら？」
小野寺「急だなぁ笑
んー…やきそば？」
「あー」
小野寺「Aちゃんは？」
「んー…焼き鳥？」
小野寺「どっちも疑問形笑」
「ふふっ笑確かに」
小野寺「焼き鳥好きなの？」
「お高いけど食べたくなる。
ほら、雰囲気に呑まれて買いたくなる衝動」
小野寺「あー、分かる笑」
#一緒にいる事の口実
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作者名：LuV | 作成日時：2021年11月6日 18時
