『姿勢』 ページ11
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Aちゃんの最後の大会日。暦としては秋らしいけど、それでも夏の暑さが残る季節に、匠先輩と立畑りな先輩に誘われて見に来たけど、凄く静かで何となく背筋が伸びる。
こんな静かな会場だったら、色々プレッシャーが凄そうだな…
そんな中でAちゃんが戦ってると考えれば、本当に凄いと思う。バレーだとチームメイトの顔とか見合わせてお互いを鼓舞し合うけど、チーム戦でも背を向けてお互いの顔なんて見る事ないし、前の人が的を射抜いた時にはそれこそプレッシャーに感じていそう。
ある意味精神面が鍛えられそうなスポーツだな
｢あ、A来た｣
小野寺「…別人、」
匠｢ある意味な笑
でも、一番そう思う時はもう少し｣
｢よしっ！｣
姿勢よく、真っ直ぐに伸びた指先からは、なんのブレもなく的を射る。まるで糸で引っ張られるみたいに。それに、この静けさの中、Aちゃんが放った矢の音が綺麗に響いて耳が心地よかった。
りな先輩曰く、音の正体は弦音って言う、矢を射放った時の弦の鳴る音らしい。Aちゃんの音は審査員や他校からの弓道部をやっている人達には有名らしくて、その音を聞く為に応援に来る人も多いんだとか。本当、凄い人だな。
それでいて、真剣そのものの表情は、普段の柔らかな雰囲気よりも、より一層としてカッコよくて、惚れ惚れとする時にはもう、それ程迄Aちゃんに惚れ込んでしまっているんだなって自分でもそう思う。
大きな声は出せないけど、でも、頑張って欲しい
匠｢っし、皆中｣
｢かっこいいなぁ、好き｣
匠｢お前はいつもそれ言うよな笑｣
｢だって、Aの弓道姿はかっこいいじゃん。
知ってる？Aの後輩達の殆どは
Aの弓道姿に惚れて入部してるんだから｣
小野寺「え」
｢初心者でも優しく丁寧に。
有段者には時に厳しめに。
だけどね、Aの凄いのは部員皆の癖迄知ってる。
いい癖は其の儘に、悪い癖は何が何でも治させる。
自分の事もあるのに、皆に目を配って耳も配って
そんな子なのよ、A｣
匠｢確かにな笑｣
｢それでいてあの性格だから人に好かれやすい。
彼氏と別れたから、狙ってる人は沢山いるよ
君も、そううかうかして居られないんじゃない？｣
小野寺「…マジか、」
匠｢まぁ、Aって持てるしな｣
｢この間女の子に告白されてた｣
｢｢ え ｣｣
｢なーに？今に始まった事じゃないでしょ？
あ！Aー！｣
匠｢静かになー？｣
#的と射抜いて心まで
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作者名：LuV | 作成日時：2021年11月6日 18時
