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「……………A?」
目が覚めるとあのキラッキラの照明もペンライトももうどこにもなくて
無機質な蛍光灯のあかりが目に入る
夢から覚めたみたい
あれ、どこからが夢なんだ
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『…………三途?』
「………さ、さんず?」
訳の分からんことを呟く私に動揺する周りの人々
重い体を起こすと、隣には増崎さんがいた
「良かった、ほんとに。無理しすぎなんだよお前は」
『あれ、私』
「大丈夫か?ここどこか分かるか?自分の名前言えるか?」
自分の名前
自分の名前…………
『…………楠原A』
一瞬の沈黙の後
増崎さんに「その名前久しぶりに聞いたな」って笑われた
そっか
さっきまで明道Aだったんだ
ここは会場だ。救護室だ。
『……………ライブは?』
「終わったよ」
終わった、か
あの後どうなったんだろう
観客はどう思っただろう
メンバーはどう思っただろう
アイツは……………
怖くて、それ以上詳しいこと聞けなかった
近くにあったスマホを見ると、大量の着信履歴が
"ちよちよ"
その文字を見ただけで泣きそうになる
「とりあえず水飲め。ライブ中ろくに何も飲んでなかっただろ」
『…………い、いらないです』
差し出されたペットボトルを押し返した
まだ怖かった
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「…………A?」
心配そうに顔を覗き込んでくる増崎さん
『……………ごめんね、』
いちばん迷惑をかけたのはこの人かもしれない
『…………ちょっと、トイレ』
なんて不自然な抜け出し方
周りで見てたスタッフ達をかき分けて部屋から飛び出した
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震える手で操作したスマホ
着信ボタンを押すと、ドシッと不安が乗っかってくる
緊張してる暇なかった
ワンコールで繋がってしまったから
「やっと出た」
『……かけすぎ』
「いつまでもでねーのが悪い」
相変わらずだった
『ごめんごめん。で、なに?』
「またべそかいてると思って」
『なんでよ』
心にも無いのに笑ってしまう
自分からとぼけて、後悔した
『…………どこにいんの』
力なく発した声
「ここ」
スマホ越しに聞こえる声と、直接耳に入る声
同時に聞こえた
『…………え?』
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なーな@きゅうり(プロフ) - このお話好きすぎて5回は読み直してますだいすき~❗️🥹 (12月15日 23時) (レス) id: 1e56c5c55e (このIDを非表示/違反報告)
うさこ - ずっとときめいた自分がいます…🥺🥺最高すぎる (11月10日 14時) (レス) @page20 id: acedfd8679 (このIDを非表示/違反報告)
雨露雫 - 夢主が突っ込んでるところが面白い🤣 (2023年3月9日 20時) (レス) id: b251a53d59 (このIDを非表示/違反報告)
雨露雫 - 続編おめでた(o^^o) (2023年3月9日 20時) (レス) id: b251a53d59 (このIDを非表示/違反報告)
u. - 初めて夢小説でなきました、完結お疲れ様でしたアイドルの闇と現実のような夢小説じゃなくて現実感があるパターン初めてですねありがとうございました (2022年1月5日 3時) (レス) @page17 id: 3f990a2493 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:全身急所ちゃん | 作者ホームページ:http://mobile.twitter.com/zensinkyuusyo
作成日時:2021年11月13日 10時