厄介ファンだと思ってた！【三途春千夜】

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いいなぁ



そんな顔で生まれてたなら、私は傷なんかつけずに、犯罪なんてせずに、真っ当なアイドルになるのになぁ


枕営業なんてしなくていくらい、全部上手くいっちゃいそうなのに




「おい、聴いてんのか？鼻垂れてんぞ」



頬に置かれた手はパッと離される



冷たい空気が温かい手に包まれていた頬を刺激して、ようやく正気に戻った




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あれ、なんで泣いてるんだっけ







あぁそっか



私、怖かったのか





危うく襲われそうになって


知らない人にはついて行くなって、小学生でも分かること守れずに結局こいつに助けられるのかよ


情けない


目の前のキモオタの言う通り、明道Aなら、きっとそんな事しないんだろうなぁ






『……怖かった』




下を向いてそう言うと、乾いた笑い声が聞こえる




「急に素直になられると気持ちわりぃな」

『……やっぱり馬鹿にしてるよね？』

「まぁ馬鹿な奴がいたら馬鹿にして当然だろ」

『最悪。クソっ、なんで涙なんか出てくんだよ』



服の裾でゴシゴシと目を拭う


もはやその姿を見られることさえも恥ずかしい



「おい、擦ると目腫れんぞ。顔見せろ」


そのまま顔を覗き込まれる

私のぐしゃぐしゃな顔、さぞ不細工なことだろう




「泣くのは別に悪事じゃねぇし泣かないのって偉いことじゃねぇだろ。どこで意地張ってんだよガキかっての」




『………』





なにそれ



そんな事言わないでよ





私の顔を見て、笑ってくれた方がまだマシだった



もっと涙出てくるじゃん





『ひっ………くっ………』

「おい、鼻水は拭け」




そっか



泣くの我慢するのって、結局なんの得にもならないんだ




私、何のために今までストレス抱え込んでたんだか






『………ねぇ』

「あ？」




息を整えて、もう一度そいつの顔を見た





『ありが……』



勇気を出して言おうとした言葉


「おう、なんだよカクチョー」


この男の着信音によって阻まれた



返せ！私の勇気返せ！




「なんか近くにサツいるって連絡来たから帰るわ。ま、せいぜいパパ活頑張れよガバガバ女」



この世で最も余計な一言に認定してやりたいくらい全てをぶち壊すセリフを吐き捨てて颯爽とかけ出すそいつ



一息遅れて、その言葉を徐々に理解する






カッチーン





『やっぱ死ね！！！このキモオタ野郎が！！！』





うざいくらい逃げ足早いそいつの背中に向かって大声張り上げるけど、返事はかえってこなかった

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