厄介ファンだと思ってた！【三途春千夜】

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黒のケースに包まれたスマホが、そいつの顔の前に掲げられていた



無駄にギラつくホテルの外観のせいで、そいつの見てるだけで不健康になりそうな髪の色をはっきりと認識させる



「ふーん、今をときめく俳優さんがなぁ。こりゃあ週刊誌にいくらで売れんだか」



甘ったるいオタクモードではなく、いかにも悪そうな男って感じにニヤつく


そのまま革靴でカツカツ音を立てながら私達に近づいてきた



「誰だよお前」

「通りすがりの顔見知りだ」

「Aちゃんの…？」

『あ、いや、知りませんこんな人』

「おい」


ギロっと睨まれたので目を逸らした


「部外者なら出てけよ」

「うるせえな。そんなだせぇ事までしてこいつと寝てぇのか？」


「あたりめぇだ。現役JKのアイドルだぞ。しかも今話題の明道A。やれるなら死んでもいい」




何が起こってるのか理解しようとせず、固まってたのもつかの間


森田さんの口から出た明道Aという言葉に体がびくつく


「あ？明道Aだ……？」


軽快に緩んでた口元が突如きつく締まり、目がギラっと光る



あかん、このピンク髪の前で私を明道A扱いしたらあかん




「あっはははははは！お前バカか？こいつはみょんたんじゃねぇぞ人違いだ」

「は？」



森田さん、地雷踏みましたね？

当の本人は全く気づきませず、青筋を立ててる




「そんなデタラメ通用するわけねぇだろ！Aちゃんは収録からずっと一緒にいたんだぞ！」

「あ？知らねぇよ。そいつはただのヤク中あばずれ女だろうが」

「だからそれが明道Aの本性だろ！！」

「あ！？みょんたんをそんな汚ぇやつと一緒にすんじゃねぇ！てめぇみてぇな粗チン野郎にノコノコついて行くような月並みな女じゃねぇんだよクソが！」







いや、酷い言い様だな！何そのしょうもない口喧嘩！私がダメージ食らってるけど！？



そして私、その粗チン野郎とやらに普通に引っかかりましたし






「じゃあ誰だってんだよ！この女！」

『いっ……！』



髪の毛を乱暴に引っ張られる

突然の痛覚に体が強ばった

あぁああ私の髪が！禿げる！禿げる！




「ぐは…………！！」




続くと思ってた痛みは割と早い段階で途切れる

と、同時に隣にいたはずの人間はいつの間にか後ろに吹っ飛んでいた




「オレの女に触ってんじゃねぇ」



護るように私の前に立つピンク髪


オレの………女…………？


いつあんたの女になったんだよ死んでもやだわ


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