検索窓
今日:6 hit、昨日:3 hit、合計:10,601 hit

第23話―あれは本当だった ページ25

ベッドの上で、1人蹲(うずくま)っていた。

傍のランプだけを点けて、静かに耳を澄ましていた。

「ただいまー…」

お母さんの声が聞こえ、素早く部屋を出る。

「おかえり!」と抱きつこうとしたが、出来なかった。

片腕にギプスをしていたからだ。

「何……如何したの?それ…」

「んー…ちょっと同僚と喧嘩しちゃってね…階段から落とされたのよ」

脳が冷えていき、血も引いていく。

感覚的に云えばそんな感じだ。

全体的に凍り付き、足が震え、視界も揺らぎ始める。

『君の所為で、周りの人々に傷が付く』

『君は人を傷付けることしか出来ないのだよ』

あの男の人の台詞が頭を過(よ)ぎる。

「本当…なんだ…。私の所為で……」

「A?」

「ただいまー」

次はお父さんが帰ってきた。

「おかえり」と云うお母さんの後ろには、

頬にはガーゼを、頭には包帯を巻いたお父さんが……

「Aっ!?」

気が付けば家を飛び出していた。

私がいるから…私の所為で…皆が傷付くんだ…!

心中で繰返しながら、目から零れる滴を気にすることもなく走り続けた。

落ち着いた頃には、何時かの路地裏の奥に蹲っていた。

『誰かが君を狙っている』

此処に居れば、その"誰か"が連れ去ってくれないだろうか。

人を傷付ける事しか出来ない私を…殺してくれないだろうか。

「誰か…助けて…」

「お望み通り、助けてやろうか」

聞き覚えの無い声が聞こえ、ゆっくりと顔を上げると、

黒いスーツを身に纏(まと)い、サングラスを掛けた男が笑っていた。

その後ろにも、同じような人が数人。

「やっと見付けたぞ…『人殺しの兵器』!」

「っ!?」

突如、白い布で口元を抑えられた。

これは睡眠薬でお休みパターンだ。

嗅いではいけない!!

本能的にそう思い、必死に息を止めた。

「此奴…ッ!仕方ねぇ、無理矢理にでも…!」

「佳い子だ。そのまま息を止めてい給え」

声が聞こえた。

聞き覚えのある声だ。

目の前の男が口から血を吹き出して倒れた。

その奥から現れたのは…

「やァ、Aちゃん。迎えに来たよ」

と、妖しく笑う太宰くんだった。

更にその奥には、返り血を浴びた中原くん。

月に照らされている2人は、冷徹で残酷で、


とても綺麗だった。

第24話―救出→←第22話―2人の会議



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 8.2/10 (5 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
2人がお気に入り
設定タグ:文スト , 太宰治 , 学パロ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

入浴(プロフ) - ゼロさん» わあ!ありがとうございます!!そう言ってもらえるととても嬉しいです! (2018年2月10日 22時) (レス) id: d6f7c6ac49 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロ - 面白いです。 (2018年2月10日 22時) (レス) id: 598748d846 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:入浴 | 作成日時:2018年2月4日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。