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第18話―彼の娘の記憶 ページ20

ある程度奥へ来たら、中也から掠(かす)めておいた銃を手に持ち、

銃口をAちゃんの心臓付近に押し付けた。

2つの質問をしたが、どれも首を横に振って否定した。

あの暗闇の中だ。

見えていた方が可笑しいかもしれない。

命の危機を知らせる為にかなり押し付けていた銃口を離し――…

後ろの中也に目で合図を送った。

石を広い、投げる構えをする前に、

私は何となくAちゃんに声を掛けた。

呪文を唱えるように……。

『…佳い子だから…忘れるんだ』

投石は、見事にAちゃんの後頭部に命中した。

気を失い、私にもたれ掛かってきたAちゃんを抱え、

人が少ない頃を見計らって路地裏から出たあたりに下ろした。

『運が悪かったね。まァ、私達が潜入捜査中だったことを不幸中の幸いと思うと善い。』

『また明日ね』と、聞こえる筈のない子に云い残し、

その場を去った――――…。


――――これが、あの夜に起きた出来事だ。

彼の娘は本当に運が善かったと思うよ。

そして、きっと彼の娘が私達の探している"異能力者"だ。

「頭の整理はできたかい?」

「…あァ。未だちっとばかし混乱してっけど、兎に角任務をこなすのが優先だ」

「そうだね。それと、彼の娘はちゃんと記憶を失(な)くしていたから、安心すると善い。

まァそれだけじゃなく、自分で記憶を変えていたけれど」

「は?」と気の抜けた声を出して、「はぁ!?」と強めに繰返した。

「何…っ、ど、どういう事だ!」

「そのままの意味だよ。

父親を待っていたら転けて頭をぶつけた…そう云っていたよ」

「おいおい、マジかよ…」中也は額に手をあてて嘆いた。

「俺達を庇ってんのか?それとも、そう思い込んでるだけなのか…」

「だとしたら、結構な罪悪感を感じるな…」などとぼやくものだから、「中也に罪悪感なんてあったのだね」と返した。

あの五月蝿い声で怒鳴られる前に、先に口にした。

「私はどちらでも無いと思うけれどね…」


「何の話?」


急に聞こえた声に驚き、素早く振り返る。

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入浴(プロフ) - ゼロさん» わあ!ありがとうございます!!そう言ってもらえるととても嬉しいです! (2018年2月10日 22時) (レス) id: d6f7c6ac49 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロ - 面白いです。 (2018年2月10日 22時) (レス) id: 598748d846 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:入浴 | 作成日時:2018年2月4日 1時

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